9-13
晩御飯を食べ終わると、シェスカが欠伸をしたので、ベッドまで彼女を運んだ。
「……ねぇお兄ちゃん、一緒にいてくれる?」
シェスカをベッドに寝かせ、タオルケットをかけると、彼女は重そうな瞼を開けながらそう言ってきた。
きっといつもいた二人と離ればなれになって寂しいんだろうな。本当だったら今晩の内に帰ってる予定だったのに、俺のせいで大好きな姉と大好きな祖母の所へ帰れなかったのだ。
「ああ、一緒にいるから、今日は早く寝とけ。明日は朝早いぞ」
俺はシェスカにそう言うと、扉の近くにあるスイッチをオフにして、電気を消した。
「……は~い」
廊下から射し込んだ明かりに照らされたシェスカは嬉しそうな表情を見せていた。
俺は彼女の傍まで行きベッドに座った。
シェスカは手探りで俺の手を見つけると、左手の人差し指と中指を握ってきた。
「……おやしゅみ、お兄ちゃん」
俺の顔を見ながらそう言う彼女の顔には、眠そうではあるが笑顔が刻まれており、俺の心を穏やかにさせた。
「ああ、おやすみシェスカ」
それから彼女が眠るまでずっとベッドに座っていた。
すやすやと寝息をたてる少女の頬を指で撫で、俺は立ち上がって部屋を出た。
「……寝たの?」
俺の寝る部屋に戻ると、パジャマ姿の猫耳少女が俺のベッドに座っていた。
「……いったい何の用だ? 明日は君が帰る船の出港時間が早いせいで朝早いんだ。さっさと寝させてくれないか?」
彼女達の服や食料を買う際、冒険者ギルドに寄って受付のお姉さんからいろいろと話を聞いた。
獣人族は海を渡った先の南大陸に住んでいるらしい。
それだけわかれば船を探すのは簡単だった。ただ、残念なことに明日の朝5時出港を逃せば1ヶ月は次の船が来ないというものだった。
朝5時というのはきついが、それを逃せば1ヶ月は船が来ないって言うなら起きるしかないのだ。
「……なんでそんなに良くする? 狙いなに?」
「狙いっていったってそんなものないよ。……強いて言うなら子どもを親の下へ送り届けるのも保育士の仕事だから? ……まぁ、保育士志望ではあって保育士では無いんだけど……」
急に落ち込んだ優真を見て、少し狼狽える猫耳少女。
「ほ……本当は僕の力狙ってる。違う?」
「力? ……なんのことかはさっぱりだけど、それって神獣族ってのと関係あんの?」
その言葉に少女は黙って頷いた。




