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十華剣式花鳥風月の型は、麒麟様との修行において四神とも呼ばれる四体の眷族から直接指導を受けた技だった。
最初は乗り気でなかった彼らに頭を下げて強くしてほしいと頼み込むも、彼らは乗り気ではなかった。そんな彼らを動かしたのは、唯一最初から協力的だった炎王朱雀さんだった。
彼は、俺がイアロの窮地を救ったことに感謝していたらしく、その様子を見ていた他の四神達も、自分の大切な子孫をずっと護れという条件の下、俺を指導してくれた。
あの時は、麒麟様の空間にいる間の話だと思っていたが、今思えば彼らはこうなることを知っていたのかもしれない。
攻撃、速度、防御、回復、それぞれに特化したこの技を授かったことで、俺はまた一つ、大切な者達を守る力を手に入れた。
そして、麒麟様直伝のあの技。
麒麟様から直接指導を受けたあの技をうまく使えば……いや、最早あの技でしか、このキュロスという男に勝つことは出来ないだろう。
◆ ◆ ◆
キュロスの手刀と優真の神器は目にも止まらぬ速さの剣戟を繰り広げていた。
キュロスは次々と神器を取り込んでいき、その強さを増していく。優真もまた、その慣れない10000倍に苦戦するが、徐々に威力を増して、かろうじてキュロスについていく。
そんな二人の戦いは、11時半を回っても続き、見る者を圧倒する。
ここまでキュロスと長く戦い続けてきた者などいない。それどころか、キュロスが本気を出してもなお、優真は倒せない。
その光景が、強さを求め続けてきたバラドゥーマの目にどう映ったのかはわからない。ただ彼は、悔しそうに唇を噛み、紅い血を床に滴らせていた。
◆ ◆ ◆
一太刀一太刀が受ければ死を予感させるキュロスの一撃。そのうえ、数多の神器の能力を使ってくる。その全てを防ぎ続けることは、優真にとっても容易ではない。
それでも、優真は刀を振るい続けた。
そうしなければ、皆のもとに帰ることが出来ないからだ。
例え疲れていたとしても、例え刀を握る力が弱くなったとしても、例えどんなに瀕死の状況に陥ったとしても、絶対に諦めてはならない。
血反吐を吐こうが、瀕死の重症を負おうが、絶対に勝って帰らなければならない。
そう約束したのだから。
「うおらぁああああああ!!!」
刀でキュロスの攻撃を防いだ瞬間、気が遠くなりそうになるほどの衝撃を受けるが、優真は雄叫びを上げて、キュロスの手刀を出せる全力をもって押し返した。




