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その現象は攻撃を放った優真の方が衝撃を受けていた。
自分を誘き寄せる罠の可能性の方が高いとわかっていても、それは自分に与えられたチャンスの可能性も充分にあった。
「やらんで後悔より……やって後悔! 十華剣式、花鳥風月、風の型……」
右手に握られた優真の刀が周囲の空気を集めていく。そして、1秒の時間を要し、優真は刀を横に一閃する。
「風竜の怒り!」
優真がその技を放った瞬間、優真の刀はいくつもの風の刃をキュロス目掛けて飛ばしていく。
その1発1発は、肌を切り裂くだけでなく、肉を抉りとる程の一撃。例えキュロスであってもまともにもらえばひとたまりもないだろう。
しかし、キュロスは片膝をついたままそこから動こうともしていない。
「これを出させたこと、誇っても良いぞ?」
たった一言だけそう言ったキュロス、その目は勝ちを諦めたようには見えなかった。
そして、優真が放った風の刃が全弾キュロスに直撃した。
「……やったか?」
地面の砂塵が舞ったことで状況の確認がうまくいかない。それでも先程キュロスが避けもせず、あの楯を出した様子も見られない。
「……てか、結界残ってるってことはまだ死んでないってことか?」
上空を見れば、未だに結界が解除される様子が見受けられない。
そんな時だった。
このままだと死ぬという感覚を味わった。
攻撃が見えないとか相手は手負いだとかそんなことを考えるよりも先に、足が地面を蹴り、跳躍していた。
直後に放たれる斬撃。それは、砂塵を上下にわけ、俺の居た場所まで到達していた。
あのまま傍観していれば胴と首がお別れしていたことだろう。
やはりそう簡単にはいかないのだろう。……そうでなくては面白くない!
俺が着地するのと同時に砂塵の中から人影が現れる。
そこに立っていたのは、先程までとは明らかに雰囲気が違うキュロスだった。
外見に変化はない。ただ、先程よりも強いことだけはわかった。
「……もしかして……あれがミハエラさんの忠告にあった【創造之王】のもう一つの効果か?」
ミハエラさんが前に教えてくれた。
創造神様の眷族筆頭、キュロスの特殊能力はある一点において、俺と似ている、と。
類似した点は互いに自身を強くする能力。俺の場合は自身を鍛えれば鍛える程、強くなる。
だが、キュロスは取り入れる物が強ければ強い程、強くなる。
生み出した神器を取り入れることで、その能力を使えるようになり、それに制限などなく、取り入れれば取り入れる程、彼は強くなる。
それが彼を最強と言わせる特殊能力【創造之王】の真の力だった。




