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優真の体が一瞬にして消える。
それは、キュロスの目をもってしても、追い付けない。
「弐の型、白百合の舞い」
「アイジス!」
強力な殺気と共に放たれた横薙ぎ、それをキュロスは咄嗟に出した神器で防ぐ。二つの神器が交わりあい、強烈な衝撃波が発生し、優真はそれに抵抗することなく、後方へと大きく下がった。
それでも優真は止まらない。
彼は、刀を縦に振るう。
それによって発生した斬撃は弧を描き、キュロスへと向かっていく。
それを見たキュロスは横に回避を行おうとする。
しかし、目の前には優真の姿があり、彼は刀を振るう一歩手前まできていた。
「聖剣エクスカリバー!!」
キュロスの手に握られた黄金の剣。その剣が放つオーラは先程までの神器とは比べ物にならない。
キュロスはその剣で優真を紅華ごとぶった斬る為に全力で振るう。しかし、キュロスの剣は優真の体に当たるどころか、刀と交わることすら出来なかった。
優真の残像がかき消えるのと同時に背後で声が聞こえた。
「十華剣式、花鳥風月、月の型、月虎の断ち」
優真の一撃は、キュロスの背中を真一文字で切り裂き、鮮血を宙に舞わせた。
◆ ◆ ◆
私は何の為に生まれたのだろうか?
全知全能、あらゆることに長け、同じ創世神の二柱にも一目置かれる存在。そんなお方の眷族という地位に果たして意味はあるのだろうか?
自分が何の為に生まれたのかわからない。
平和と調和を望み、それを実現するだけの力と権力とカリスマ性を併せ持つあのお方にとって、私など居ても居なくても同じなのではないか?
それでも、私にあのお方の力になる以外の選択肢はない。
あのお方がやれと言ったなら従うし、他の者達に何を言われようと、私にそれ以外の選択肢など必要ない。
だが、他の者達は違った。
神の意思に従いつつも、自分のやりたいことをする為に動いている。それらは非効率で、私ならとっくに終わらせられるような内容であったとしても、彼らはその何倍もの時間をかけて行う。
無駄なことをする。そう思いつつも、彼らの顔を見ると、どこか羨ましくも思う。
眷族とは、いったいどういう存在なのだろうか……それがわからなくなってきた頃、私は一人の少女と出会った。




