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優真の青いオーラが徐々に白みを帯びていく。
その信じられない光景に、キュロスの目は見開き、衝撃で攻撃が出来ずにいた。
それ程までにあり得ない光景が広がっているのだ。
主神に全幅の信頼を寄せ、また神も、彼に自分の力を授ける程の信頼を寄せている。
たった一年、いや、一年未満でその地点に到達することなど不可能だ。まず第一に神が眷族に、自分と同等の力を授けることすらあり得ない。
それがあり得るとするならば、神と眷族、二人の間に相当強い信頼関係が出来たことに他ならない。
優真から発される覇気を真っ正面から受け続けていたキュロスの額に脂汗が流れる。
そして、優真から発されるオーラが完全に色を変える。
目を開けて見続けることもままならないようなプラチナ色の光。それに包まれる優真の体に赤い色など見えない。
優真は到達する。『王の領域』に。
「【剛勇之王】」
その言葉に、キュロスの表情が引き締まる。
その領域に至ったということはつまり、自分と同格の存在になったということに他ならない。
パルシアスやバラドゥーマ同様、油断できる相手ではなくなってしまった。
「神槍グングニル」
キュロスは、自分の特殊能力【創造之王】を発動させ、穂先が先程までとは違う槍を造り出した。
キュロスはそれを容赦なく優真に投げる。
その投擲は、光の速さで優真に迫る。だが、それが優真に当たることはなかった。
「十華剣式、漆の型、松葉翡翠の断ち」
優真は右手を横に振るう。それは、発生した衝撃だけで神槍グングニルを意図も容易く真一文字に切り裂き、キュロスの頬に浅い切り傷をつけた。
キュロスが信じられないといった様子で頬についた傷に触れる。左手の指が赤く染まっていた。
そして、再び正面を見ると、既にそこには優真の姿はなく、彼は落ちていた自分の剣を拾っていた。
◆ ◆ ◆
なんだろう……力が溢れてくる。
今ならなんでも出来そうな気がする……でも、なんでも出来なくていいや。
料理が下手くそでも、シルヴィがいる。
掃除が下手くそでも、万里華がいる。
交渉事が下手くそでも、ユリスティナがいる。
他にも俺には出来ないことがたくさんあって、それでも別にいい。
俺は一人じゃない。
俺が出来ないことは、皆に力を貸してもらえばいい。皆が出来ないことなら、俺が力を貸せばいい。
全部が出来るそんなつまらない人間になるよりも、出来ないことばかりで、皆と共に歩んでいける人間になりたい。
だから、俺は皆のもとに帰る。
キュロスという敵に勝って、笑顔で皆のもとに帰ろう。
「その為の力を貸してくれ……【剛勇之王】! 全能力値10000倍!!」




