9-11
10分くらい撫で続けた結果、二人が満足したことで、俺はようやく解放された。
しかし、俺の苦労はこれで終わらなかった。
さっき焼き鳥をあんなに与えたはずなのに、お腹減ったと言って、この猫耳少女が俺と共に家を出ようとしたのだ。
さすがにそれは、俺も全力で引き留めた。
素っ裸の女の子を二人も連れて歩いたら、刑務所行き決定だ。……こっちの世界に刑務所があるかは知らんけども。
とりあえず、ここでおとなしくしていないとご飯をやらないと言ったら、すぐにおとなしくなった。
それから数十分後、いろいろ食材を用意し、二人のためにおそろいの白いワンピースと麦わら帽子、それからパジャマを買ってきた。
さて、出かける前に入れ直した風呂にでも入ってさっさと寝るか。
そう考えて、脱衣場で服を脱ごうとした時だった。
「お兄ちゃん、お腹空いた~」
「ご飯~!」
二人の急かすような声で、俺は服を脱ぐのをやめた。
……あれ? もしかして…………俺が料理する感じ?
自慢じゃないが、俺は料理が出来ない訳じゃない。……だが、いわゆる男飯だ。栄養面よりも量重視の料理しか基本的に作ったことがない。
それこそ、大学の一人暮らしで作った料理は幼なじみが絶句するレベルだ。
味は濃いし、栄養もない。
万里華に料理を教えてもらったこともあったが、細かいし複雑過ぎてまったく頭に入らなかった。
そんな俺が料理?
子ども達に作る料理なんて作ったことないぞ!
誰か助けてくれ~!
(……はっ! 実はハルマハラさんには成人した可愛いお孫さんがいて、その人が代わりに作ってくれる……みたいな展開があったりして!)
『ありません』
(なら、こんな使えない俺を見かねて、シルヴィがわざわざ料理を作りに来てくれる展開!)
『ある訳ないじゃん』
(な……なら、実は猫耳少女に隠された料理スキルが!)
『猫まんまなら作れるんじゃね?』
……終わった。
さっきから目の前に映る画面とのやり取りを自分自身虚しく思いながら、俺は現実逃避をやめることにした。
調理台に立った俺は絶望した。調味料がほとんどないのだ。
……詰んだ。もう外に行く気力すらわいてこない。
『しょうがないな~。優真君、君が買い込んだ食材を全てアイテムボックスに送ってくれないかい?』
「……は? この状況で何言ってんの? お前には一口たりともやらんぞ」
『いいから! 時間がもったいないだろ? 早くしないと子ども達がぐずるよ?』




