表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
789/970

51-20


 優真の体力は未だに余裕がある。

 麒麟の修行で鍛えた身体能力が活きているのだろう。しかし、その目には追い詰められたような様子を見せている。

 手に持つ刀は、小刻みに震えている。

 時間が1秒経つごとに、自分の死が近付いてきているような感覚。麒麟の創った空間と違い、ここで死ねば、生き返ることなんてあり得ない。

 相変わらずの仏頂面で追い詰めてくるキュロスの目には、一部の隙もなく、どんなに速く動いても追い付かれ、様々な神器による多彩な攻撃が飛んでくる。

 優真の刀も、キュロスの神器を斬ることは出来ても、キュロスに届くことはない。


「神槍ゲイボルグ」

 再び、別の神器がキュロスの手に握られる。

 そして、キュロスはそれを槍投げの要領で優真の方に向かって投げた。

 その速さを見て、優真は槍を斬ろうとした。

 しかし、急にゲイボルグは止まる。理由はわからない。ただ、優真が焦って手を出したことに間違いはない。

 時間が何度も止まっていたことで、感覚が麻痺していた。

 時間が止まったから、ゲイボルグが止まった訳ではない。

 そして、直後に辛い言葉が目の前にタッチパネルの文章として現れる。

『槍に対しての攻撃を確認。【勇気】の使用をキャンセルします』

 今まで、自分から攻撃する度に現れていた文章が、優真に絶望を与える。

 優真の刀はゲイボルグの先端にギリギリのところで届かず、空を斬る。

 そして、ゲイボルグは再び動きだし、動揺している優真のお腹を刺し貫いた。


 ◆ ◆ ◆


 優真に突き刺さったゲイボルグは、優真の体を貫通して結界まで到達すると、塵となって消えた。

 直径10センチ程度の穴。優真はよろめき、片膝をつく。口から吐血し、腹から流れる血と共に、優真の周りを真っ赤に染め上げていく。

 トールハンマーによる不意打ち以降、初めてまともに入った攻撃。それに観客席は盛り上がっていく。

 痛みに呻くだけで、優真は何もしない。キュロスもまた、優真の様子を見ている。

「~~ッグッ……!!?」

 優真は痛みを我慢しながら立ち上がり、虚ろな眼でキュロスを正面から見る。

「この程度じゃ……俺は死なないっ!」

 立ち上がった優真の体に、傷の類いはなかった。

 はね上げた治癒能力で神速治療を行ったのだ。

 優真は刀を握り、まだ諦めるつもりはないと、眼だけでキュロスに訴える。

 しかし、突如優真を、虚無感が襲った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ