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51-13


 それはまるで、うまくいったとでも言いたげな顔だった。

 そして、すぐにディジェンヌは理解する。

 さっさと殺しておかなかった自分のミスを。


 突如、倒れていたメイデンの体から神々しい光が発せられた。それは、とても瀕死の者が発することの出来る光ではなかった。

「……信じらんない……そんな一か八かの賭けに出るなんて……」

 その光に見入られたディジェンヌは乾いた笑いしか出てこない。

 生死を賭けた大博打。

 選ばれなければ、待っているのは死。その代わり、うまくその力を手に入れられれば、彼女は今より更に一段階進化する。


 倒れていたメイデンが手を地面につけ、よろめきながら立ち上がる。その目は生気に満ち溢れ、死ぬつもりなど一切無い様子だった。

「……ご主人様は優しい……こんな私に生きろって言ってくれる……でも! 私は自分が生きる場所は自分で決める! やれと言われて処刑人をしていた私はもういない! これからは! ご主人様の隣で、皆と一緒に笑える一人の人間になる!!」

 そして、少女が纏っていた光が弾け散り、霧散した。


 光が霧散したものの、そこに立っていた少女に変わった様子は見られない。

 それを見たディジェンヌは、ほっと胸を撫で下ろす。

 何も起こらなかった。きっと失敗したのだ。

(…………ちょっと待って!! じゃあなんで……っ!!?)

 ディジェンヌは安心した際に離してしまった視線を再び、メイデンの方に向けた。

 しかし、そこに彼女の姿はなく、彼女は既に目の前まで迫ってきていた。

 わかっているのに反応することは出来ず、ディジェンヌの腹部に細い腕が突き刺さる。

 その威力は、とても瀕死の者が出せるようなレベルではなく、万全の自分でも出すことは出来ないと思えた。

 そして、ディジェンヌの体は一瞬で結界に叩きつけられた。

(……入った!? 嘘よ! あんな小娘が入れる領域じゃ……)

 目を前に向けるディジェンヌは見た。

 先程のアイアンメイデンとは別格のヤバい兵器をメイデンは手に持っていた。

 見ただけでわかる。あんなものをくらえば自分の遺体は塵すら残さないであろうことを理解する。

 そして、メイデンはディジェンヌにとって絶望の言葉を口にする。

「【鋼鉄之王(ヘパイストス)】」

 

 存在する眷族筆頭達の中でも数名しか辿り着けた者はいないと言われている境地。

『王の領域』

 メイデンはその領域に入ったのだと体が理解し、ディジェンヌは青ざめた表情で、あっさりと降参を申し出た。


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