表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
779/970

51-10


 試合開始の鐘の音が鳴った瞬間、巨体に似合わぬスピードで、ディジェンヌはメイデンに真っ正面から突っ込んだ。

 そして、ディジェンヌがメイデンをハグして、その怪力で締め上げようとした瞬間、全員の視界に驚くべきものが見えた。

 それは手も足もない棺桶。あるのは女性のものと思われる顔だけの鋼鉄の棺。

 それが、メイデンの背後に現れ、彼女の四肢を鎖で巻き取り、中に閉じ込めた。

 そのお陰か、ディジェンヌの腕は空を切る。

「……それが貴女の神器、鉄の処女(アイアンメイデン)かしら?」

 かわされたことで冷静さを取り戻したのか、ディジェンヌは姿の見えないメイデンに問いかける。

 だが、彼女は何も答えない。

「時には防具、時には相手を閉じ込める拘束具として、その真価を発揮する……だったかしら? キュロスも面倒なものを造ってくれたわね……」

 そう言いながらも、ディジェンヌはその神器を見て、恐れるどころか、にやついていた。

「まぁそのくらいのハンデは無いと面白くないわよねぇ……」

 そう言うと、ディジェンヌはメイデンが入った筈のアイアンメイデンに抱きつき、その怪力でアイアンメイデンを締め上げる。そして、アイアンメイデンは呆気なくへこんでいき、遂には真っ二つに折れてしまった。

「あたし相手に鎧なんて無いと同義よ? さっきみたいに避ければまだチャンスはあったでしょうに……残念ねっ!!」

 そして、アイアンメイデンの上半分はディジェンヌの抱擁によって地面に落ちた。

 しかし、そこにメイデンの姿はなかった。


「……私はこっちだよ?」

 その言葉が聞こえた瞬間、ディジェンヌは衝撃を感じ、慌てて振り返る。

 いったいどういうことなのだろうか。

 そこにはメイデンが二本の剣を持って立っていた。

「……いったいどんな手品なのかしらね……」

 振り返りざまに構えたディジェンヌは、メイデンから目を離さない。メイデンもまた、声を発することなく、ただそこに立っている。


 この時、メイデンは優真が少しでも回復できるように時間を稼ごうとしていた。

 アイアンメイデンの中に入った瞬間、【処刑道具召喚(おもちゃ箱)】を発動し、その効果により、メイデンはディジェンヌの背後にもう一つのアイアンメイデンを出現させていた。

 アイアンメイデンに秘められた能力は【転移】。

 対象を地獄へと移動させる為に設けられたこの力は、中に入った者を別のアイアンメイデンに移動させる。

 それこそ、神器としての機能を兼ね備えたアイアンメイデンに移動させなくてはならないのだが、メイデンの【処刑道具召喚(おもちゃ箱)】がそれを可能にしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ