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「……メイデンさん!? なんでここに?」
優真が驚くのも無理はなかった。
彼女は今の今まで目を覚ましていなかった。当然、優真が今朝見た時も意識はなかった。
「……話はユリスティナちゃんに聞いた。ファルナちゃんがカリュアドスとの戦いで目を覚まさないから中堅を任せられる眷族が居ないって……」
メイデンは淡々と説明する。そこに立っていたのは、かつてのメイデンだった。優真は彼女の言葉で目的を見失いそうになるが、彼は自分の手で報復を行いたいと思った。
「それはそうだが……でもあいつらは……!?」
一歩を踏み出した瞬間、足下が十字に光る。
優真はそれに気付き、急いで下がろうとするが、既に手遅れだった。
優真の手足に鎖が巻き付き、十字架にくくりつける。
その姿を、メイデンは冷酷な眼差しで見ていた。
「……やっぱり気付いてなかったんだね。……私がご主人様と話している時に仕掛けたんだよ? ……それにも気付けないくらい、ご主人様の視野は狭くなってる。……いい? 創造神様の眷族は強い。いくらご主人様が強くても、二人目……キュロスには絶対に勝てない。あいつはとてつもなく強い。だから、あのオカマは私に任せて?」
そう言った彼女は、優真に微笑みかけた。
そのぎこちないながらも、相手を思いやっているのだとわかる表情を見て、優真は目を伏せた。
「……わかった。メイデンさんの気持ち……素直に受け取らせてもらうよ」
「……うん、任せて」
メイデンは微笑みながら頷き、裁きの十字架を解除する。
優真は床に着地し、メイデンの方に目を向ける。
「……俺なんかの為に……ごめん」
優真が頭をかきながら謝ると、彼女は、ううんと言いながら首を横に振った。そして、メイデンは優真の横を通り抜け、背中越しにこちらを見てくる優真に向かって、呟く。
「……私だって愛する人が死ぬのは嫌だから……」
その言葉に驚いた表情を見せる優真だったが、既に通路を歩いていた彼女の表情を確認することは出来なかった。




