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51-3


「……そっか……優真はやっぱり優真なんだね……」

 訳のわからないことを呟いた万里華は、まるで全てを悟ったような雰囲気を醸しだしていた。そして、彼女は俺の頭の上に手を乗せる。

「優真はいつも皆の為に頑張ってて偉いね~! でも、背負いこみ過ぎて重圧で押し潰されないようにね……私は優真が楽しそうに笑うところが好きなんだからさ……」

 寂しそうに、そして、哀しそうに彼女は笑った。

 彼女がどこまで察したのかわからない。だが、その言葉で少し気は楽になったような気がする。

「……心配かけて悪いな」

「……なに言ってんのよ! 心配くらい私にもさせてよ!」

 そう言いながら、万里華は俺の横に立って、俺の頭に乗せていた手で背中をおもいっきり叩いてきた。

「私は優真のお嫁さんになるんだからね! ここまで来るのに私はいっぱいいっぱい頑張ったの! あと少しなの!」

 そう言った万里華は俺の右腕に寄りかかる。そして、見えてしまった。彼女の足下に雫が落ちるところを。

「……だから、ちゃんと私達のところに帰ってきてよね……」

 その言葉に、どう返せばいいのかわからなくなってしまった。


 ◆ ◆ ◆


 整備された道を歩く優真達の雰囲気はあまり楽しそうなものではなかった。

 それもそのはず、次に戦う相手のことを思えば、楽観視など出来ないからだ。優真自身、内心では戦うことに対して恐怖を抱いているし、彼に好意を抱いている者達も優真が無事に帰ってこられるように望むが、心の奥底ではそれが難しいことを知っている。

 だが、暗い雰囲気の理由はそれだけではなかった。

 優真の隣、いつも彼の腕に抱きついて離れようとしない白髪の猫耳少女がこの場にいないのだ。

 出場選手の内の一人として、その名がエントリーされている彼女は、今もベッドの上で目を覚まさない。

 天使ミハエラと治癒能力に特化しているイアロがどんなに頑張っても、ファルナは目を覚まさなかったのだ。

 そのイアロも、優真の役にたとうと頑張り過ぎた為、今はファルナの隣で休んでいる。その二人の面倒を見る為に、ユリスティナは護衛のスーチェと共に本拠で待機している。

 いや、ユリスティナはおそらく、ここに来たくなかったのだろう。自分の愛する男がやられる姿を見ていたくなくて、彼女は本拠に残る口実を用意したのだと、ドルチェとシェスカ以外のこの場にいた全員がわかっていた。

 

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