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51-1


 準決勝が行われる日の前夜、上級に分類される神々が住むエリアの一つ、炎の男神の本拠に、夜の闇と同じ色のローブを被った3人の眷族が、異様な雰囲気を漂わせながら、中に入っていった。


 すぐに、炎の男神に仕える天使達が入り口まで集まり、彼らを迎え入れようとする。

 そこまではいつも通りだった。

 急に天使の一人が顔を鷲掴みにされる。

 そして、天使は赤い炎に包まれた。他の天使はその一瞬に起きた出来事が理解できず、ただ、呆然と立ち尽くす。

 そして、炎が発生したことで生じた気流が、天使を鷲掴みにしていた眷族のフードをめくらせ、その黒に近い赤髪を全員の前で晒す。

 そして、彼は狂気を感じさせる笑みを浮かべていた。

 それを見た瞬間、他の天使達はより一層の恐怖を感じ、咎めない他の二人を見て、すぐに逃げようとした。

 しかし、彼女達全員が一斉に首へと手を当てる。

 その表情は青ざめ、口をパクパク開けているが、声は出せない様子だった。

 天使の一人がかろうじて横を見ると、眷族の内の一人、黒いフードの下から白髪が見えるその男が白い手袋をつけた両手を前にして、何かを掴んでいる仕草を見せていた。

「【死神の手(デスハンズ)】」

 小さな声で男がそう言うと、天使達が一斉に吐血し、その場に倒れ伏した。


 そして、赤く染まった床を中央にいた黒髪の男が堂々と歩き、炭と化した天使を放り投げた男と、着けていた白い手袋を血だまりに捨て、新しい手袋を装着した男がその後に続く。

「これより、我々アゼストは反乱を興す。カイザルク、アルゼン、お前達二人は当初の予定通り、あの忌まわしい筆頭を殺せ……」

 前を歩くその男がそう指示を出すと、白髪の男は恭しく一礼してその言葉に従う姿勢を見せた。しかし、赤髪の男は違った。彼は愉快そうに笑う。

「本当にいいのか? あいつはお前が殺したかったんじゃないのか?」

 わかっているのだろう。彼の目や口元がニヤニヤしているのは声などからわかった。

「殺してやりたいさ。あいつは俺がこの手で殺したかった……だが、二兎追うものは一兎も得ずという諺がある。だから俺は……全ての元凶である(あいつ)を殺す」

 その怒りや恨みといった感情がこもった声を聞き、カイザルクとアルゼンの二人は満足げに立ち止まり、何も言わずに彼とは別の部屋に向かった。


 そして、彼は辿り着く。

 橙色の髪に派手な格好をした億劫そうに自分を見下す存在。

 フードの男は、その神に向かって言い放つ。

「炎の神よ……10年前の借りを返しに来たぞ」

 それが、戦いの火蓋を切る合図となった。


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