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「……創造神様はいったいなんでそんなことを?」
優真の質問にミハエラは首を横に振る。
「わかりません。天上の神々の考えは我々天使には想像もつきません。考えることすら意味を成しません。ただ、一つ言えることがあるのだとすれば、私にはどうすることも出来なかったということだけ。あの方が部屋に籠って一人で泣き続けるのを黙って聞いていること……無力な私にはそれしか出来ませんでした」
重苦しい雰囲気が空間を支配する。彼女の話し方が神妙なことも相まって、当時の状況が大まかに想像できてしまう。
そして、ミハエラが口を閉ざしてから少し経ったあと、優真は辛そうな表情のまま、口を開く。
「……それってどのくらいの出来事なの?」
「隔離されていた時間ですか? 人間の時間軸で言うなら、3267年と324日ですね。ただ、創造神様は誰かに会いたいという願い以外は基本的に聞き届けておられました。退屈な時間を紛らわす為に、世界の全てが見える神器を与えたり、優真様が初めてこの世界にいらっしゃった際に訪れた部屋も、この本拠内に創っていかれました。ただ、愛だけは絶対に与えようとはしませんでした……そして、今から100年程前のことでした。創造神様が自身の眷族であらせられるキュロス様に、自分の娘を嫁がせ、神へと昇華させようと目論見始めたのです。その時、初めてあの方は創造神様に反発なされたのです。それだけは嫌だと、自分は神になりたいのだと、初めて自分の意見を創造神様にぶつけたのです…………しかし、それを創造神様は突っぱね、あの方に対して、お前は私の言うことだけを聞いていればいいのだと、言い放ったのです。……ですが、それは私達の予想通りの結果でした」
ミハエラは怒りで震えたかと思うと、急に背筋がぞっとするような不敵な笑みを浮かべた。
「そして、『神々の余興』が終了し、キュロス様率いる創造神様のチームが優勝なされた際、私達は遂に決行しました。創造神様がキュロス様とあの方の結婚を発表しようとした瞬間、注目の集まる場にあの方……子どもを司る女神様が登場なされたのです。多くの者が予想だにしないなか、子どもを司る女神様は、その場で自分は子どもを司る神になると宣言なされました。それを聞いた創造神様が激昂するも、破壊神様と時空神様がそれを認めたことで、子どもを司る女神様はこの世界に改めて誕生したのです! なぜ子どもを司る神になられたのかは、私にもわかりません。ただあの時、時空神様と破壊神様、そして、大地の女神様が協力したことで、創造神様に一杯食わせるという目的は成されました。しかし、良いことばかりではありませんでした。子どもを司る女神様に怒りを抱いた創造神様が世界を巻き込むほど怒り狂い、そのせいで地上に住む子ども達の扱いが更に悪化したという影響もありました。ですが、ようやく子どもを司る女神様は創造神様から解放されたのです!」
そう締めくくると、ミハエラは椅子から立ち上がり、優真を正面に見据え、深々と頭を下げた。
「……だからこそ、今一度優真様にお願いしたいことがあります。優勝してください! キュロス様に打ち勝ち、女神様が神で居続けられるように……お力をお貸しください!!」




