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その言葉を理解した瞬間、その衝撃の大きさに大声を出しそうになるが、その前にミハエラさんが俺の口に左手を抑えて、自分の口元に人差し指を立てた。
そして、俺がそれに頷くと、彼女は手を離してくれる。
「…………え……婚約者? …………まじで?」
「まじです」
正直言って、とても信じられないような内容ではあったが、ミハエラさんの目からは嘘をついている感じがしなかった。
「へぇぇぇぇ……婚約者ねぇぇぇぇ……まさか仏頂面してロリコンとは思わなんだ……」
「あまり女神様をロリっ子というのは承服しかねます……ですがまぁ、正確には創世神の一柱、創造神様が勝手に決められた婚約者なので、キュロス様がロリコンかどうかは定かではございません」
「創造神様が? ……まぁキュロスってやつが創造神様の眷族筆頭だというのは分かるんだが、それでなんで相手が子どもを司る女神様になるんだ? いくら創世神の一角だからって他の神に強制は出来ないんじゃないの?」
「そうですね。いくらなんでも創世神の三柱にそこまでの強制力はありません」
「なら……」
「ですが、神ではなく、自分の実の娘であれば、優真様が元居た世界でもあり得たのではありませんか?」
「…………まさか……」
「はい。そのまさかでございます。我々の主神、子どもを司る女神様は、創造を司る男神様と大地を司る女神様の間に生まれた実の娘でございます」
ミハエラが放った言葉は、優真に硬直させる程の衝撃を与えた。しかし、それに構わず、ミハエラは語り始めた。
「大地の女神様と創造神様の間に生まれたあの方は、特別な御子でした。なんでもそつなくこなし、将来は様々な神になれる可能性を秘め、私が仕えていた大地の女神様も、あの方の将来に大きな希望を見出だしておられました。天使の我々にも分け隔てなく接するとても優しいお方で、皆、あの方のことを好意的に見ておりました。……しかし、創造神様だけは違いました。自分の娘が余計な事をしないようにこの本拠を与え、大地の女神様や、他の神々との接触を固く禁じました。唯一、あの方の傍に居ることを許されたのは、身の回りの世話を任じられた私のみ。それ以来、創造神様だけがここに来るようになりました。しかし、創造神様はあの方に冷たい態度を取り続け、あの方に構うような真似は一切なさいませんでした。……その結果、あの方から笑顔が無くなっていきました」




