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「くそっ! くそっ! どうして俺はあそこで……あそこで勝てないなんて思っちまったんだ!」
バラドゥーマは顔に悲壮の色を漂わせながら周りにあった物を片っ端から壊していく。
破壊神の眷族の為だけに用意されていた豪華な椅子や机は見るも無惨な姿に変わり果てていく。
全てがボロボロになった部屋で、バラドゥーマは自分の弱さを嘆く。
「いつもこうだ! 毎回毎回パルシアスかキュロスに負ける!! なんで勝てない!! 俺はあの二人よりも強くなろうと死ぬ程努力しているっていうのに、いつもいつも勝てない!! なんでだ! なんであんな輪を乱すようなバカが俺より強い!! なんで俺はあいつを倒せない!! もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと力が欲しい!!!!!」
「ならばその願いを叶えてやろうか?」
突如として聞こえた声に、バラドゥーマは慌てたように振りかえる。
そこに立っていたのはフードを目深に被った男達。
赤い髪と黒い髪がそれぞれのフードから見える。影でその全体を見ることは叶わないが、フードで隠れていても、雰囲気やその声で男だと察することができる。
そして、バラドゥーマは気付く。
準準決勝第4回戦に出てくるチームの一つがフードで姿を見せない集団であることを。
「……すまんな。変なところを見せてしまった。すぐにうちの天使達に片付けさせる。すまんが、もう少し待っていてくれないか」
例え、自分の気持ちが整理出来ていない状況であろうと、これ以上主神の名を汚すような真似は出来ない。バラドゥーマにとって、相手の戯れ言に耳を傾けることよりも、下の者に示しをつける方が先決だった。
しかし、先程声を発した男とは別の、赤い髪を覗かせる体格の大きい方がバラドゥーマを帰そうとはしなかった。
「まぁ待てよ。あんたの気持ちはわからんでもない。少しくらい話を聞いちゃくれないか?」
自分の行く道を防がれ、バラドゥーマの額に筋が浮かぶ。
「どけ。俺は今機嫌が悪い」
「いいや、どかねぇ。どうせあんた、手を出せねぇだろ? 試合外で手を出した場合、状況によっては問答無用で地獄行き。いくらあんたが破壊神様の眷族筆頭だろうと、規則は破れねぇよなぁ?」
勝ち誇ったように言ってくるその男に、苛立ちが増すバラドゥーマ。一触即発の雰囲気を漂わせるなか、もう一人の男が仲裁に入った。
「どいてやれ。不毛なにらめっこなど1円の価値にもならん」
その言葉で、バラドゥーマの前に立っていた男は、露骨なため息を吐き、道を開けた。
それを見て、バラドゥーマは言葉を飲み込み、黙って通路へと足を運んだ。そんな彼の背中に声がかかる。
「強くなろうと思うなら、俺達の所に来い。お前なら大歓迎だ」
バラドゥーマはその言葉を聞き流し、そのまま外へと出ていってしまった。




