49-22
その凝縮されたエネルギーは、地面を抉りながらパルシアスへと迫っていく。当たればパルシアスとてひとたまりもないであろう一撃。それに対して、パルシアスは手をかざす。
「君の機転には毎度毎度感服するよ。使えば簡単に殺してしまうような特殊能力……それを制御するのに一体どれだけの年月を使ったのか僕には見当もつかないよ……だからこそ、残念でならない」
そう言うとパルシアスの手がそのエネルギーに触れた。
赤い鮮血が辺りに飛び散る。しかし、それらが地面に到達する前にバラドゥーマが凝縮したエネルギーの塊は霧散した。
その時見えたバラドゥーマの表情には、とても信じられないとでも言いたげなものだった。激しい動揺が彼の中で起こったのだろう。
今まで研鑽を続け、磨き上げた技。それが相手に通用しないと知った時、彼がどれだけ精神的なダメージを負ったのかは本人にしかわからない。
だが、これだけは言えた。バラドゥーマの顔には確かに一瞬、絶望のようなものが映っていた。
傷を負ったパルシアスの腕はみるみるうちに再生……いや、傷そのものが無かったことになっていく。
その現象にバラドゥーマの表情が苦痛に歪む。
そして、動けないでいた足で地面を蹴り、パルシアスに向かっていった。
それは先程と同じような動きでありながら、どこか足りないような攻撃だった。だが、わかる者にはわかる。
彼の攻撃は精神と同調していないように感じた。
殺ると思って打つ攻撃と殺れないかもしれないと感じて打つ攻撃は同一ではない。例え同じ技、同じ動きであっても、心が違えば、威力も違う。
実際、パルシアスはそれらを軽々といなし、避けようともしていなかった。
そして、パルシアスがカウンターで放った一撃は先程までとは異なり、あっさりと彼の顔を捉える。
「残念だよ、バラドゥーマ。君の特殊能力は素晴らしい……だというのに、君は自分の技を磨き、特殊能力を無理矢理押さえつけて発動している。それじゃ特殊能力は真価を発揮しない。僕やキュロスに追い付くことなんて絶対にない。君が僕はおろか、ハナにも勝てなかったのは、君が破壊神様に与えられた力を自分のものに出来ていないからだ」
そして、パルシアスはそれを証明するかのように、【時間之王】を発動し、バラドゥーマの何倍もの威力を発揮してみせる。
その力をまともに受けたバラドゥーマは、呆気なく結界へと吹き飛ばされていく。
「それじゃあね、バラドゥーマ。次の対戦で君が成長していることを切に願ってるよ」
その言葉を背中越しに放ちながら、パルシアスは通路の方へと歩いていった。
遅くなって申し訳ございません。




