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「ありゃ? 確かに少しもらったけど……それだけで僕の身を傷つけちゃうの?」
そんな言葉を血と共に吐き出したパルシアスだったが、試合はまだ継続中だった。
彼はすぐに危機感を覚え、先程同様、自分の体を1メートル後方へずらす。すると、先程まで自分がいた場所に強烈な蹴りが振り下ろされる。
殺気や覇気といったものを感じさせることのない静かな攻撃。しかもそれは、不可視のスピードで迫ってくる。
避ける事が出来たのは直感でそこに居たらまずいとパルシアスの体が感じたからだ。
次も避けれるとは限らない。だというのに、パルシアスは面白そうといった感情を隠そうともしていなかった。
「期待以上だよ! キュロスのでたらめな強さとは違う。ユウマの爆発的な強さとも違う! その洗練された強さ……眷族となり尚、高みを目指し続けてきた君の強さ!! その強さに敬意を払い……僕も特殊能力を使用するとしよう!!」
その瞬間、パルシアスの覇気とオーラが出鱈目な威力の威光を発した。
そこに映ったのは、先程までとは明らかに雰囲気が違うパルシアスの姿だった。
その体から溢れ出すオーラは白銀色だった。
パルシアスが自分の腹部に手をかざす。
「この程度の傷を与えたくらいで僕に勝ったつもりでいるんなら考えを改めた方がいい。僕が時戻しをすれば、こんな傷は無かったことになる」
その一言で、彼の体は万全の調子に戻る。
口から垂れていた血も、地面に吐き出された血の塊も、まるで全てが無かったことであったかのように、綺麗さっぱり消えてしまった。
「だろうな、お前の【時間之王】はキュロスの特殊能力より厄介だよ。……なんたって俺の【破滅之王】とは相性が悪すぎるんだからな!」
そう言うと、バラドゥーマの手に強力な負荷がかかり、大気がその手に吸い込まれていく。
「だが、そんなものは関係ねぇ!! 不利だのなんだの言って、自分を下に見るのは雑魚の考えだ!! 真の強者なら、今まで培ってきた経験、流した汗、磨き上げた技を信じ、全ての力をぶつけて逆境を乗り越えてみせろ!!」
気を抜けば、パルシアスをも引き寄せようとするその拳を、バラドゥーマは構える。
「200年前の借りは返させてもらうぞ、パルシアス……破天! 修羅壊拳!!」
その凝縮されたエネルギーをバラドゥーマは拳と共に放った。




