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バラドゥーマは自分が結界へと叩きつけた方に目を向けず、なぜか右手を不思議そうに握ったり開いたりしていた。
「ちっ、相変わらずだりぃな」
「そっちこそ、相変わらず酷い言い様だね」
その暢気そうな答えは後ろから聞こえてきた。
そして、バラドゥーマはその鋭い目で先程パルシアスが叩きつけられた筈の結界を見る。そこには、へこんだ痕のある銀色のブロックが転がっていた。
「パルシアスの特殊能力……じゃねぇな……テレポートか?」
バラドゥーマは設けられた時計を確認して、その判断を下した。結界の外に設けられた時計に違和感は無かった。
「正解!」
自分へ背中を向けながらブロックの方へと歩を進めるバラドゥーマを見ながら、パルシアスは楽しそうに答えた。
「さすがにびびったよ~! バラドゥーマってば、前より格段に速くなってるんだもんな~!!」
バラドゥーマは彼の話に耳を傾けることなく、そのブロックを握った。
こんなブロックは始めから用意されていなかった。
だが、結界の張られた時点で、外への干渉は例えパルシアスであっても不可能であり、ましてや上の天使が気付かない筈がない。
(まさか結界が張られる直前にこれを中に入れたのか? ちっ、こんな物が転がっていることにも気付かないとはな……)
バラドゥーマの顔に怒りの感情が現れ、銀色のブロックに異様なひびが入る。それはまるで、空間にひびが入ったかのような状態だった。
そして、ひびが割れた瞬間、辺りに強い衝撃波が発生し、銀色のブロックは一瞬で跡形もなく消えてしまった。
「もろに入る直前にさっきのブロックと位置を入れ替えやがったか? だがまぁ、その程度で無効化できる程、俺の拳はやわじゃねぇぞ?」
目を向けられ、何を言われているのかわからない様子のパルシアスだったが、すぐに異変を感じとり、手を地面について咳き込む。そして、口から血の塊が吐き出された。




