49-19
パルシアスが自分の攻撃をどうやって避けているのかバラドゥーマには検討がついている。
彼ら時空神の眷族のみが使うことの出来る魔法『未来予知』。おそらくそれの効果でバラドゥーマがどんな攻撃を撃ってくるのかを瞬時に把握し、避けているのだろう。
しかし、バラドゥーマの神速をうたう一撃を、見てからかわすなどという芸当が魔法のみで回避出来る筈がなかった。
それを可能にしているのは、パルシアスの反射神経と回避を可能とするだけの身体能力があるからだ。
だが、その事実は逆に回避は絶対ではないということの証明。
だからこそ、バラドゥーマは容赦なく強烈な拳や蹴りによる一撃を放ち続けていた。
二人の試合に派手さはない。
バラドゥーマが殴り、パルシアスが避ける。
バラドゥーマが反撃するも、バラドゥーマは呆気なくそれをいなす。
一方的過ぎる戦いは時につまらなくなるもの。
何百何千何万と長い年月を過ごしてきた神々にとって、血湧き肉踊るような戦いは至高の余興となる。
だからこそ、パルシアスによる紙一重の回避はスタジアム全体に緊張感をもたらす。
ここまで起きた波乱に次ぐ波乱。いつもと異なるベスト8。
それが、神々に期待させる。
不動のファミルアーテ第2位の敗北を。
バラドゥーマの攻撃が止まる。
それと同時に、パルシアスも一定の距離を保つと、そこで立ち止まる。
バラドゥーマは先程までとは異なり、構えを解いている。
そして、バラドゥーマはゆっくりと口を開く。
「準備運動はこれくらいで大丈夫だよな?」
その言葉に、パルシアスは小さく笑った。
バラドゥーマは滅多に表舞台へ顔を出さない。
喚ばれた時やスティルマ大森林であった事件のような例外を除けば、彼は常に鍛練を行っている。だからこそ、パルシアスも気付けなかった。
今までバラドゥーマが100年前の頃の全力程度しか力を振るってないことに。
「もちろん構わないよ。それとも僕に遠慮しているのか?」「そんな訳無いだろ」
「だよね~だったら早く打ってきなよ」
「言われずとも」
その返事はすぐ傍で行われたものだった。
目の前まで迫ってきていたバラドゥーマに、パルシアスは目が追い付かなかった。
そして、隙が出来たパルシアスの腹に、バラドゥーマの掌亭打ちが突き刺さり、パルシアスの体は轟音を響かせながら壁に激突した。




