49-16
『皆様、大変長らくお待たせ致しました』
上空で翼を羽ばたかせている天使が、マイクを使って告げる。
先程の【塵壊】の影響で元通りにするのに時間がかかっていたのだ。今か今かと待ち続けていた者達にとっては、辛い待ち時間だったことだろう。
『世界を創った3神、創世神という最高位の神様同士の戦いは1勝1敗で大将戦に委ねられました! そして当然!! この大将戦に出る御二方は皆様予想できることでしょう!』
その紹介で、観る者全ての視線が彼女の手に誘導され、そこから一人の男が出てくる。
『まずは破壊神様が選んだ眷族の紹介です! 前神々の余興では、同じ創世神様の眷族筆頭、キュロス様に準決勝で敗れ、決勝の前に行われる3位決定戦ではハナ様に後1歩のところで敗北。しかしながら、その身体能力は人間上がりとは思えない程の実力者。多くの眷族をその拳一つで屈伏させた猛者!! 拳聖バラドゥーマ・ヴァラク様だぁああああ!!!』
その紹介に、観客は大盛り上がりになる。
しかし、通路から出てきた赤髪の青年は、不機嫌そうなオーラを醸し出していた。
『続いて、時空神様の選んだ眷族の紹介です!』
天使クレエラがそう言うと、全員の視線がクレエラの手の先にある通路に視線を向けた。
『前回も前前回もその前もず~~~~~~~~っと、ファミルアーテ2位の座を死守してきた男!!! しかし、今年の彼は一味違う!! 今まで得ようとしなかったその座を全力で取りにきた彼がどんな戦いを見せるのか!!?? 世界を導く先導者!! パルシアス様だぁああああ!!!』
その紹介と共に、一人の青年が観客席に手を振りながら出てくる。
そして、その歩を所定の位置で止めると、対戦相手のバラドゥーマではなく、観客席の一画に視線を向ける。
それは、一足先に準決勝へのキップを手にいれた好敵手へと向けたものだった。
しかし、パルシアスは何かに気付いたかのように、視線を対戦相手の方へと向けた。
そこには、殺伐とした雰囲気を醸し出すバラドゥーマが構えをとっていた。




