49-15
目の前で結界が解かれていくさなか、優真はなにかを考えるような表情をしていた。隣には、ハナによる状況説明を受けて、ようやく落ち着きを取り戻した万里華が不安そうに見ていた。
「…………あれって思った以上に厄介な能力だな……」
実際に戦ったとはいえ、情報は少なく、解析が得意なミハエラさんも女神様共々この場には居ない。
だからこそ、目で見た全ての現象が彼女の能力。
てっきり、ホムラと同じく気配や存在を察知しにくい能力なんだろうと思っていたのだが、やはりそれだけでは無いらしい。草木を発生させる能力なのかと思ったが、それだと対戦相手の不可解な行動に納得できない。
対戦相手の男は、まるで自分から負けにいったように見えた。
不可解な点が多すぎる。そもそも、どうやってあの【塵壊】を突破したんだ?
あの草木を発生させたのは、一つの特殊能力によるものなのか?
だが、少なくとも、そういうことが出来るということだけは理解できた。先の試合に目を向けられる程、自分達に余裕がある訳では無いのだが、そのことを頭に入れておくべきだろう。
(……身体能力は普通状態のファルナ以下だと踏んでいたが……なるほどね……エパルは特殊能力が異様に強い系か……)
その結論で締めくくった優真は、席から立ち上がり、何かつまむ物を買いに行くことにした。
◆ ◆ ◆
「戻ったぞ~パルシアス~ジュース~」
控え室に戻ってきたエパルは意気揚々とそんなことを言い始める。
しかし、パルシアスからの返事は「自分で買ってこいよ」という淡白なものだった。
「なんじゃ~? 冷たい奴じゃの~。そこは勝者となった妾を讃えてみかんジュースを献上するところじゃろ~」
「ハイハイスゴイスゴイ……てか、エパルならプラウド程度に負けないだろ? 試合内容も爆発演出まであった先鋒戦より地味だったし……」
「ふん、つまらんの~ユウマじゃったらここでジュースを買ってきたじゃろうに。……だいたい、最初の数分はあの男の自由にさせておった。むしろ、あの者の特殊能力が発揮しやすいように舞台を作ってやったのじゃ。悪いのはあっちじゃろ」
ふてくされたようにそう言ったエパルはソファーに座る。そして、天使が持ってきたジュースを乱雑に受け取り、ストローを使って飲み始めた。




