49-14
エパルが眷族となった月日は100年も経っていない。にもかかわらず、彼女は時空神の眷族達の誰よりも強い。
唯一勝てないのは、眷族筆頭のパルシアスだけ。
だが、彼女が望んだのは強さではない。
彼女は戦いが好きな訳ではない。
時空神やパルシアスと同じで面白いものが好きなだけの少女。
彼女は望む。
自分が面白くなれる空間を。
「【空間之王】を発動じゃ! 妾の命令はこの場にて絶対! この攻撃を避けることは許さぬ!」
突如として目の前に現れたエパルが、プラウドに命令する。すると、彼女の周りにあった蔓が数本に纏まり始め、先が鋭利な状態となる。
そして、その蔓がプラウドを貫こうとすごい速さで近付いてくる。
だが、彼も破壊神によって選ばれた代表の一人。
その程度の攻撃は見切れて当然だった。現に彼は、その攻撃を避けようとした。
「ぐっ……!!?」
脇腹に激痛が走る。
痛みが走ったところを見れば、そこに蔓が突き刺さっており、赤い液体が自分の体から流れていた。
確かに避けようと思った。攻撃も曲がったり特別な動きをした訳ではない。
なら何故攻撃が当たった?
答えは簡単だ。
自分はその攻撃を避けなかったからだ。
蔓が引き抜かれ、赤い液体が宙を舞う。
膝をつき、血が流れたところを手で押さえる。
(……なんだっ!? ……いったい何が起こったというのだ!?)
息を荒げ、エパルの方を見る。
そこには、先程と同じような状態の蔓が4本存在していた。
「一度で終わらせるのはもったいないからのぅ。妾はな、妾を嘲るような奴には容赦しないと決めておるのじゃ。まぁ、せめてもの情け、殺すのは勘弁しておいてやろう……もう一度攻撃を行う。この攻撃を避けることは王である妾が許さぬ!!」
その発言と共に、4本の蔓がプラウド目掛けて飛んでいく。
「我はっ……破壊神様に勝利を献上するのだ!!! こんな蔓……【塵壊】で灰となれ!!!」
「その特殊能力の使用は王である妾が許さぬ」
その一言で、プラウドの光っていた体から、光が消える。
直後に蔓が突き刺さり、プラウドは激痛で悲鳴を上げる。
「そうじゃった、そうじゃった……その蔓は王である妾の命令で意識を失わせる毒入りじゃ……お主は意識を失い、王である妾に勝利を献上せよ」
思い出したかのように発した発言が、プラウドの耳に届く。それと同時に何かが体に注入されるかのような感覚を覚え、プラウドの意識は暗闇へと誘われた。
それは、結界解除の合図でもあった。




