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光が消えた瞬間、ほとんどの者は絶句する。そこに映し出された光景は、先程までとはまったく異なる光景だったのだ。
視界を妨げる木や草はその片鱗すらもなく、砂漠と変わらぬ光景になっていた。
それは見ている者に絶望と疑問を抱かせる。
触れれば塵芥と化してしまう塵が、茶色の地面を灰色に染めている。
唯一、他の色と異なる部分があるとすれば、一人の青年が中心にいることくらいだろう。エパルという少女の生存は絶望的と言えた。
だからこそ、おかしいのだ。
彼女が灰と化して消えたのだとすれば、結界が消え、空に浮かぶ天使が勝敗を知らせる筈だ。だが、天使クレエラは耳に手を当て、誰かと話している様子は見せるが勝敗を知らせようとはしていない。
当然、結界の中にいるプラウドも怪訝そうな表情を見せていた。
しかし、すぐにその理由を知ることになる。
フィールドが灰色から緑色に変わったのだ。
目の前で起こった異常に、プラウドは状況がうまく理解出来ないでいた。
自分の攻撃は確実に結界内全域を支配し、その効果を十全に発揮した筈だった。
だが、目の前に広がる草木は幻覚などではない。
あり得ない……そう断言したいが、聞こえてくる含み笑いは幻聴などではない。
彼女は生きているのだ。
「妾の特殊能力は本物の草木を生やす能力……とでも思っておったのであろう……このうつけめ……」
蔑むような声と口調に腹立たしく感じるが、プラウドは何も言い返すことができなかった。
「その程度の特殊能力で創世神の一角を担う時間と空間を司る女神様のNo.2が務まると思うとったのか?」
まったくもってその通りであった。
創世神の3神は、最高神として多くの眷族がいる。その数は100や200を超え、その中でも『神々の余興』に出られる者は、当然上位の者達のみ。見た目が小童であろうと何であろうと、強い者のみが出られるのだ。
「妾はのぅ……この特殊能力を得たからこそ、ここに立つ資格を得たのじゃ……。本当はもっと楽しもうかと思っておったが、お主は妾を小童だと嘲るような目を向けた。……妾にその目を向けたこと……後悔させてやろう……」




