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「破壊を司る男神様からいただいたこの力、今、時間と空間を司る女神様の眷族に対抗する力として使わせていただきます」
恭しく一礼したプラウドの手が、神々しく光り始める。
そして、プラウドは先程までエパルがいた筈の場所に向かって、歩を進め始める。
そして、自分の進路に立ちはだかる巨木を右手で触れる。
「【塵壊】の発動をここに宣言する!」
その瞬間、その巨木はみるみるうちに塵と化し、フィールドに落ちた。
そして、その塵の山にプラウドは手を突っ込み、塵を一握りして、その塵を辺りに撒いた。その結果、塵が触れた草木に異変が起こる。
一瞬にして、塵芥と化していく樹木達。
風を遮断している結界が無ければ、たちまち辺り一帯は灰の山と化していたことだろう。
「良いのか? 姿を消したままでは誤って貴様にこの灰をかけてしまうことになるぞ? 当然、木の陰に隠れていても無駄だ。むしろ、触れぬ方がいいぞと忠告しておこう。この塵に触れたものは塵となる。塵が触れたものに触れても塵とまではいかんが、細胞に多少の影響は与えることだろう。いずれにせよ、早く出てきた方が身の為だぞ」
塵と化していく環境の中で、プラウドが声を高らかに忠告する。それは、どこにいるかがわからない相手を誘き出す為のものだということは明白であった。
しかし、その内容はとても恐ろしいものだった。
彼の発生させた特殊能力【塵壊】は、彼が能力発動を終了させない限り、周囲のものを塵と化していく効果を持っていた。しかし、一度塵に触れれば、まさしく一瞬で塵となる為、彼にはどうすることも出来なくなってしまう。
願うことなら、さっさと出てきてもらって、正々堂々真っ正面から戦いたいというのが、彼の本音だった。
だが、その願いは通じなかった。
どこからともなく声が聞こえてきた。
「忠告など余計なお世話じゃ。妾がお主の特殊能力に引っ掛かって塵になるとでも思うとるのか? 妾はパルシアスの次に最強なんじゃぞ? お主ごときの浅はかな作戦で出てきてやるほど甘くはないわい」
その声は木々に反響して聞こえてくる。だが、肝心の居所が掴めない。
「それに、お主じゃ妾に勝つことなど叶わぬ。もう少し強くなって出直してくるのじゃな」
「なるほど……出てくる気は無いと……では、塵となって後悔してくださいね」
先程までとはうって変わっての冷たく冷徹な声。そして、全てを塵にする光が彼の手どころか、全身を光らせていく。
「死の世界」
高々と上げた右手によるフィンガースナップ。それが鳴り響いた瞬間、結界内全域を光が包み込んだ。




