49-10
時は少し遡り、パルシアスとエパルの二人が去った観客席での場面。
優真達は観戦用に買ってきたジュースを飲みながら、椅子に座っていた。
そして、目の前で結界が張られている最中に、万里華がふと疑問に思う。
「そういえばあの子……確かエパルって子なんだっけ? あのエパルちゃんって子は強いの?」
その質問は優真にではなく、隣で買ってもらったジュースを美味しそうに飲んでいるハナに向けられたものだった。
今まで大地の女神の眷族として上の観客席にいたハナは、初めて飲むジュースに感激していた。それ故に、自分の名前が出されなかった質問を聞いておらず、自分の方に顔を向けている万里華に「えっ?」と言葉に出して反応する。
「いやね、あの女の子って強いのかな~って思ってさ」
「さぁ? 私もあの子とはほとんど会ったことないし……よくわかんないかな。実際に戦ってみたユウタンの方が詳しいんじゃない?」
その答えに、万里華は鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔になって隣の優真の方を見た。
「戦ったって……優真が!!? いったいどういうことよ!!?」
そう言いながら、シルヴィと話していた優真の胸ぐらを掴んで揺らし始めた万里華。その対応に、優真は何がなんだかわからない様子だった。
「ちょっ待って!? こぼれる! ジュースこぼれるから!? これ蓋無いから体揺さぶらないで!!」
その反応に、正気を取り戻した万里華は優真の服から手を離して「ごめん」と謝った。
「いや、まぁ溢れなかったから別にいいけどさ。それで……何の話?」
しょげていた万里華は、その反応に対して先程の話を思いだしたかのように感情を昂らせる。
「そうだよ! 優真がさっきの子と戦ったって話! 私初耳なんだけど!」
「あぁ……その話ね。前に時空神様の本拠に行った時、試験だって言われていきなりあの子と戦わされたんだよ。いや~戦いにくいのなんのって……どした?」
優真が万里華の表情を見た瞬間、そんな疑問を抱く。それほどまでに、万里華は衝撃を受けたような顔になっている。
「嘘だ!!!! 優真が年齢不詳とはいえ見た目が子どもの子に暴力を振るうなんて信じらんない!! さてはお前! 優真の幻覚だな!! あのなんとかの魔女ってやつの幻覚なんだな!! 言え!! 優真をどこにやったぁああああ!!!」
涙目になりながら万里華は優真の体を再び激しく揺すり始める。
「ちょっ違っ!? 手ぇ出して無い!! 暴力なんて振るって無いから! あっやべ……酔う……まじ酔った……揺らすのやめ……て……」
その後、錯乱した万里華がハナやユリスティナによって押さえられたことで、優真はなんとか面目を保つことはできた。




