48-43
「そういや君はまだ二桁なんだっけ? じゃあ美少女の下着姿は刺激的過ぎたかな?」
鉄の女神様はおちょくるような笑みをこちらに向けながらそんなことを聞いてくる。
「ノーコメントで」
ここでうっかりそんなことありませんよ……とか、変な答えを返すと絶対機嫌を損ねたり、いじったりしてくるので、真顔でそう答えるのが無難だろう……と思って返答したのだが、何このつっまんね~とでも言いたげな顔……別に女神相手に邪な感情抱いたりしませんよ? だって絶対うちの女神様にチクるじゃん。
「……本題に入っても?」
その言葉に鉄の女神様は露骨に溜め息を吐く。
「……まぁ別にいいけどさぁ……神は気紛れなんだ……出来れば早く済ませてほしいね……」
立ったままの俺にそう言った女神様は、ソファーにふんぞりかえって俺の目を見てくる。その表情からは、明らかに不機嫌であるということが伝わってくる。
だが、そんなわかりきったことを知ったくらいで遠慮をする気はない。
「ハナさんからうちにいらしたと聞きました」
「……そうか……」
「……本当にあれでよろしかったんですか?」
「…………」
俺の質問に女神様は答えない。俺の方を見ず、明後日の方向を見ている。
「あんな別れ方……メイデンさんが可哀想過ぎます……」
「……優真君……」
「……なんでしょう?」
明後日の方向を向いたまま口を開いた女神様の声は、普段よりもトーンが低かった。
「私は君をかっている。君ならきっとメイデンを大事にしてくれる……幸せにしてくれるだろうと信じている」
「……ありがとうございます」
「……だからこそ、解せない。君はいったいこんなところで何をしているんだい? メイデンが辛い時、傍に居てあげるのが君の仕事だろう? 例え目を覚ましていようがなかろうが、ここで時間を無駄に費やすくらいなら、少しでもあの子の傍に居るべきだろう」
そう言った女神様から伝わってくる感情は、『怒り』だった。ここで何を言っても、怒られるだけだ。
だったら、俺は成すべきことを成そうと思った。
「わかりました。自分が何を言っても無駄のようですし、今日はもう帰ります」
「そうしたまえ」
短くそう返した女神様は、結局こちらを見ようとはしていなかった。




