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その表情を見た瞬間、ハナはイライラが募っていった。
「はぁ……一応、子どもを司る女神様からこれだけは伝えるように言われたから伝えるね」
そう言ったハナは、少し面倒そうではあったものの、仕方ないといった風に話を切り出した。その話を、メイデンも口を挟まずに聞き入る。
「まず! メイデンが怒って暴走した件については……」
その言葉を聞いた瞬間、メイデンは唾を飲み込む。
メイデンもうっすらとではあるが、何があったのかを覚えている。
彼にだけは否定されたくなかった自分の存在理由。それが否定されたような感じがして、怒りが沸いた。しかしながら、自分でも、このままやり続けることに迷いを生じていたこともあり、それを受け入れそうになった。だが、それを受け入れては、今までの自分はなんだったのかと考えてしまい、体が怒りに飲まれた。
そこからは、体は理性の言うことを受け入れず、主神にやるなと言われていた禁忌を使用し、暴走。結果、大切な人を傷付けてしまった。
理性を失った暴走は、神々を不安にさせるため、使用禁止となり、本来であればその場で処刑。
聞かずともわかる。
(私は……今まで私が他の眷族に行ってきたように処刑される……)
そうメイデンが覚悟したのを見計らったかのように、もったいぶっていたハナが再び口を動かす。
「無罪!!」
その言葉を聞いたメイデンは数秒間、何も喋らなかったが、頭に疑問符を浮かべた。
「…………え?」
その時見せたメイデンの表情が面白かったのか、ハナは少し楽しそうだった。
「だから無罪だって! 今回はユウタンが頑張ってメイデンの暴走を食い止めたから被害はゼロだったしね! ちゃんとユウタンに感謝しなよ~! ユウタンってば鉄の女神様と一緒に創世神の3柱に頭下げてたんだからね~!!」
「……ご主人様が?」
「そっ! 一番被害を被ったユウタンがそう言うならって時空神様がお許しくださったんだよ。でも、暴走の危険性がある者に『処刑人』の地位は与えられないって時空神様がおっしゃったから、残念だけどメイデンの腕輪は没収だって」
そう言われて、メイデンは自分の左腕を見た。
そこには、地獄へと繋げるゲートの役割を持つ腕輪が無かった。
しかし、代わりに銀色の光輝く指輪が左手の薬指につけられていた。




