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酷い人生だと思った。
お気に入りのドレスは幾度も行われた戦闘で返り血を浴びて赤く染まり、所々破れたりしている。動きやすいようにドレスの先も破いた。
睡眠中に襲ってくるから満足な睡眠は出来ない。森に入ってなんとか狩れた動物を食べようとしても、襲撃されて最低限の食事すら許されなかった。
だから、私は大好きなおばあちゃんを頼った。
幼い頃に何度か寄って、私に優しくしてくれた大好きなおばあちゃん。
"困ったことがあったらいつでも頼ってちょうだい"
そう言われたのを思い出して、私はそこに向かった。
森の奥にある小屋。見えた瞬間、嬉しくて扉を叩いた。
私を見て驚いたおばあちゃんは、すぐに私をお風呂に入れてくれた。
家よりも狭い風呂が、人の暖かさに触れたみたいで気持ちよかった。
まだ数日しか経っていない筈なのに、もう何年もお風呂に入ってないような感じがした。
そこで私は、辛くて、悲しくて、悔しくて、泣いた。
お風呂から上がったら、テーブルの上に温かそうなシチューがあって、おばあちゃんが椅子に座って私に手招きしていた。
おばあちゃんが用意してくれたシチューを見て、久しぶりのまともな食事に散々出した涙が溢れてきた。
「いただきます」
二人でそう言って、食事にありついた。
おばあちゃんのシチューは本当に美味しかった。
美味しい。美味しい。
そう感じて食べていた私は、スプーンを落としてしまった。手の感覚がおかしくなって、指が震えていた。
「……おばあ……ちゃん?」
その時見たおばあちゃんは今まで見たことのないような笑みを浮かべていた。
視界が歪む。苦しくて、呼吸がまともに出来ない。声もまともに発することが出来ない。出すことができたのは涙と血だけ。
椅子から転げ落ち、苦しみから解放されたくてもがく。
(嫌だ……死にたくない……)
「まだ生きてるのかい? さっさと死にゃいいのに……」
そう言いながら、大好きだったおばあちゃんはうずくまる私を蹴った。それが信じられなくて、私はおばあちゃんの顔を歪んだ視界に入れた。
その顔は、私に恐怖しか与えなかった。
「恨むんなら、こんな場所にあたしを閉じ込めたあんたの父親を恨むんだね~。あんたの目を見るたび、あんたの父親を思い出して殺したくて殺したくて仕方なかった……ようやく願いが叶ったよ……ありがとね……」
それを聞いた瞬間、自分の涙は、目から流れるのをやめた。
大好きだった人達を殺され、信じていた者に裏切られる。そんな結末で終わった私の人生。
そんな私が次に目覚めた場所は馬車の中だった。




