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明らかに異様な光景だった。そのうえ、今も優真の数は増え続けている。だが、メイデンの動きに迷いは無かった。
彼女は、その内の一人を躊躇なく叩き潰す。
だが、彼女が銀色の茨を上げても、そこに優真はいなかった。訳がわからないのだろう。彼女は先程叩いた銀色の茨を顔の近くまで持っていき、裏を見たりしている。そして、何も無いのを確認すると、再び優真を叩き潰した。
だが、手応えがない。
そんな時に、声が聞こえた。
「十華剣式、拾の型、華天撫子の舞い……」
どこからともなくそう聞こえた瞬間、メイデンは目に見える範囲全ての優真を銀色の茨で叩き潰してみせる。
彼女の意識は既に飲み込まれている。だが、本能が彼女にそうしろと言ってくる。それ程までに、優真の雰囲気が変わった。
目に見える優真全てを叩き潰した。
しかし、その直後に倍以上の優真が現れる。その数は20人以上にも見えた。どれかが本物なのだろうとわかってはいるのだが、全員偽物には見えない。
全員、能力が更に高まっていく。傷も無くなっていく。違いがどんどんわからなくなっていく。
だが、今のメイデンに攻撃をやめて様子を見るという選択肢はない。
再びメイデンは優真を叩き潰し始めた。
◆ ◆ ◆
彼の現状に一番戸惑っていたのは戦っているメイデンではなかった。画面でではなく、直接見たいと思った子どもを司る女神は通路を抜けて結界の前に立った。
目の前では、今も自分の眷族が相手を翻弄していた。
「……いくらなんでもおかしいよ……こんな能力君に与えたことないじゃないか……」
神の自分でもどれが本物の優真なのかわからない。だが、女神にはどこかでこれに似たような光景を見た記憶があった。少なくともゴッドシティや天界ではない。ここ最近、しかも地上で見たような……。そして気付いた。
「あれか! 初めてホムラちゃんと戦った時に見せた優真君の技……そういえばあの時も白百合の舞いって言ってた!!」
だが、あの時は残像のように見えるだけでここまでの精度では無かった。
それはそうだろう。
なにせ、あの時よりも、今の優真の方が文字通り桁違いに強いのだから。




