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「それで……どうしたらいいんすか!!」
上空にいる銀髪の女神に向けて、優真は声を張り上げる。
『う~ん……キスでもすりゃいいんじゃね?』
鉄の女神がそんなことを言い始めたことで、優真は足が縺れてこけた。
勢いで顔面を擦って痛そうにしている優真は、鉄の女神に顔を向ける。
「真面目に!!! どうしたらいいんですか!!!」
明らかに怒っている。結界とメイデンのことがなければ斬りかかってきそうな程の剣幕だった。
それもそうだろう。こんな生死がかかっている状況でキスをしろと強いてくる奴に怒らない訳が無かった。
むしろ、近付いた瞬間、あのとてつもない量の茨に襲われて軽く数回は死ぬ。
『いや別にふざけてはないよ? ただ他に方法ってないじゃん? だってこんなこと今の今まで無かった訳だし、前代未聞の事態じゃん? よくよく考えたら鉄の茨斬っても再生するし、気絶させようにも、今の優真君じゃ加減間違えた瞬間、峰打ちもへったくれも無いし、安全に止める方法も絶対に取りたくないし……なら、キスしか無くね?』
「もっと……頭働かせて!!! 女神だろ!! メイデンさんの主神なんだろ!!! つか厨二病キャラ崩れてんぞ!!!」
女神の発言にぶちギレ中の優真は、メイデンの攻撃をかろうじて避けながら鉄の女神に文句を言う。もはや彼自身、敬語を使う余裕どころか、何を言っているのかもわかっていない様子だった。
『でもそれ以外に方法思いつかないし……とりあえず思いっきりやっちゃって~! まぁ駄目だったら次の案を考えればいいし~!』
その言葉に、優真の額に浮かんでいた筋が増える。もはや最初からあの女神が仕組んだことなんじゃないかと疑いたくなってくるレベルの無茶ぶりだった。
だが、優真自身、他に方法が思いついてる訳じゃない。
自分に並々ならぬ愛情を向けてくる彼女に多かれ少なかれ好意があるのは彼も認めている。
顔も可愛く、肌もみずみずしい。強いて言うなら見た目がファルナ達と同い年ぐらいにしか見えないので犯罪を犯しているような気分になることくらいだろう。
(……だが、他に助ける方法を思いつかないのも事実だし……むしろ、他の選択が殺すか俺が死ぬかじゃ、どっちも選びたく無いし…………だぁ~っもう!!!)
「やってやる!! やってやるさ!!! ただしぜってぇ後から文句言うんじゃねぇぞ!!!」
もはや神に向ける言葉としてはどうかと思う言葉使いではあったが、それに文句を言う者はいない。
鉄の女神は最後に『任せた!!』と答えて、控え室へと戻っていった。
こうして、優真のやるべきことが決まった。




