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「あっ、お兄ちゃん! いったいどこ行ってたの! 急に消えちゃって心配したんだよ!!」
リアカーの元へと戻ると、俺を見つけたシェスカがそう言いながら、駆け寄ってきた。
「いや~、すまなかったな。もらったお小遣いでなんか買ってやるから、許してくれ」
俺がそう言うと、シェスカはあっさりと「いいよ~」と言って許してくれた。
「……ねぇ、その子だぁれ?」
「…………さぁ?」
首を傾げたシェスカの指が向けられたのは、当然フードを被った子どもだった。
それもそうだろ。いきなりどこかへ行ってしまった同行者が、見ず知らずの子どもを連れて戻ってきたんだ。
立場が違えば俺でも同じ質問をするだろう。
「あ……あんた、いったい何者だ? 僕が全然見えないなんて、生まれて初めてだ!」
俺がこの子のことについてどう説明すればいいのか悩んでいると地面に下ろしたフードを被った子からそんなことを聞かれた。
初めて聞いたその子の声は、女の子なんじゃないかと思うぐらい高かった。
「……俺は優真だよ、雨宮優真。保育士見習い兼冒険者をやってるんだ。君はなんて名前なんだ?」
「…………」
おい、急に喋らなくなったんだが、いったいどうしたっていうんだ? ……もしかして名前を明かしたくないとかかね?
「……というか、さっきから気になっていたんだが、フード外しなよ。人と話す時はフードをとりなさいってお母さんから言われなかったか?」
「…………」
またかよ! だが、いくら寛容な心を持つ俺でも、さすがに礼儀作法が失礼なままの子どもをそのままにしとく気はないですよ!
「さぁ、そのフードをとりなさい!」
「や……止めろ!」
「やめません! こういうのは小さい時からなおしておかないと、いつまでたってもやり続けるからな!」
俺はそう言って、その子が押さえるフードを無理矢理外した。
直後、俺は後悔した。
少し力を加えていたせいで、フードだけではなく、そのローブもまとめて剥いでしまった。
「お……女の子!?」
ローブが取れて露になったその子は、白い髪に頭の上に獣耳を生やした女の子だった。




