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優真は、メイデンの背後に立っていた。
刀を構え、真剣な眼差しで彼女の一挙一動を観察している。そして、先程まで見ることすら難しかった横薙ぎが、優真を襲う。しかし、その攻撃は空を斬るだけに終わった。
彼女の攻撃を跳躍で避けた優真は、音を立てずに地面へと降り立ち、再び彼女に向けて刀を構え始めた。
優真は今、全ての能力値をかつて、対ネビア戦で見せた千倍にする技、全能力1000倍ではねあげていた。
しかし、今の彼はその頃よりも圧倒的に強い。
それだけではない。彼の体は、麒麟との死闘によって、【ブースト】の負担に耐えられるようになった。
今の彼に、10分のタイムリミットはない。
メイデンは攻撃してこない優真の様子を観察する。そして、少しの時間を要した後、他の茨も動かして優真に攻撃を仕掛ける。その数10本。それらが異常な速さで優真に襲いかかる。
だが、優真は落ち着いていた。
「十華剣式、伍の型、白桜の舞い」
優真がそう言うと、彼に迫り来る銀色の茨が次々と斬られていく。その速さに下級の神々は目が追い付かない。
スタジアムの上空に浮かぶ球体の中で戦いを見ていた上級の神々も、その戦いから目が離せなかった。
正直、銀色の茨を斬ることでメイデンさんに痛みがあるのではないかと不安だった。だが、彼女の顔色は怒り以外の感情が見受けられない。
勝手なことしか言わない俺に怒ってる。だが、彼女の攻撃をこれ以上受けて、無事でいられる気がしない。だから、受けてあげる訳にはいかない。
もし、俺がここで死んだら、控え室で俺を応援してくれている人達を悲しませてしまう。メイデンさんを傷付けてしまう。……それに、ホムラを生き返らせることが出来なくなってしまう。
だから、ちゃんと謝ろう。
全てが終わったら、ちゃんと彼女に謝ろう。
優真は迫り来る銀色の茨を斬るのをやめ、再び空中に跳んだ。その跳躍力は異常で、優真は上空の結界に足をつけた。そして、足に力を込める。
急に優真がいなくなったことで、メイデンは優真の姿を探している。さっきまで優真が斬っていた銀色の茨も既に再生している。
そんな彼女に向けて、優真は目にも止まらぬ速さで距離を詰める。
「十華剣式、壱の型……」
優真がそう言って刀を振ろうとした瞬間ーー
『彼女を殺さないでくれ!!』
聞き覚えのある声がスタジアム全体に響きわたった。




