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諦めと同時に閉じていた目を、恐る恐る開けてみるとメイデンの攻撃は空中で制止していた。
そして、そこに見えたのは、一人の見知った青年だった。
「パルシアス!?」
優真が驚いたようにそう言うと、浮いていたパルシアスがこちらに振り返り、笑顔で手を振り始めた。
「やぁユウマ。どうやら無事みたいだね」
パルシアスは優真の近くに降り立つと、そんなことを言い始めた。
「なんで……いや、そんなことよりいいのかよ! こんなとこにいたらお前が反則になるんじゃ……」
「大丈夫だよ」
優真は自分のせいで彼が神に制裁を加えられるんじゃないかと心配するが、彼はそれを否定した。
「追い詰められた眷族が暴走する事って実は過去に幾度とあるんだよね~。そんで創世神の御三方は僕に彼女を始末するよう言ってきたんだ~……あっ! 安心していいからね。こういう時は君の勝ちになるから……」
「……どけ」
「え?」
パルシアスは優真の言葉にそう聞き返した。優真の雰囲気は先程とは別人のようだった。感じられる感情は、怒りだけ。
「どけ、パルシアス。これは俺の行動が招いた結果だ。助けてもらって悪いんだが、お前は外でおとなしく見てろ……」
「でもいいの? ぼろぼろじゃん?」
パルシアスが指摘した通り、優真は既にぼろぼろだった。受ければ眷族でも死ぬような破壊力を持った攻撃を二度ももろに食らって、立っている方がおかしい傷だった。
それでも優真は、口から垂れた血を腕で拭い、前にいるパルシアスを横にどけた。
「問題ない。そんなどうでもいいことより、あれは俺が引き起こしてしまった結果なんだ! ……自分がやってしまった結果から死んで逃げようとしたり、お前に戦わせたりする方が俺にとっては大問題だ!! 責任とらないで逃げるなんて……そんなの、俺の目指すべき保育士の在り方じゃない!!」
その瞬間、優真は縛られていた枷から解き放たれ、真の実力を発揮する。優真の体から神々しいオーラが放たれる。
『メイデンを助けたい』
その考えが、最後の条件を満たした。
「はは……相変わらず君は面白い。いいよ! これ以上、僕は手を出さない。君の好きにすればいい!」
パルシアスは面白そうなものを見たかのように笑い、指を鳴らしてその場から消えてみせた。その瞬間、止まっていた時が再び動きだし、鞭のようにしなる銀色の茨が優真のいる場所を襲った。
しかし、そこに優真はいなかった。




