48-22
剣は優真の手で受け止められ、微動だにしなくなっていた。そして、剣の先から付け根へと赤い液体が流れていく。
よく見れば、優真の表情からは痛みを我慢しているのがよくわかった。
その時、メイデンは身に迫る危機を感じとり、剣を手放して大きく後方に跳んだ。
そして、再び視界に映った優真は右足を高く上げていた。避けていなければ、メイデンはそれをもろにもらっていたことだろう。
だが、優真の攻撃はそれで終わらなかった。優真が右足を戻すと、優真の動きを伺うメイデンに向かって、右手の剣を投げたのだ。
しかし、それを予想していなかったメイデンは目を見開くだけで避けることができなかった。
優真の投げた剣はとてつもない速さで迫り、メイデンの銀髪を数本宙に舞わせた後、結界に阻まれ、地面に転がった。
後少しでもずれてたら、死んでいたかもしれないという事実が、自分に恐怖を与えるのと同時に、彼が自分を殺す気はないのだと完全に理解できた。
だが、今の行為で気が動転して動けなかったことは事実。剣の軌道を追ってしまったことで、彼から目を離してしまったことも後悔したって手遅れだ。
優真は落としてしまった刀を拾いなおし、メイデンの剣を適当に投げ捨てていた。
今のチャンスを活かせなかったのはメイデンにとってかなりの痛手。だが、元々ここで倒せるなんて思っていなかった。仕掛けを設置し、隠し弾も見せれた。これで、彼の集中力は分散することになるだろう。
「……さぁご主人様……続き……しよ?」
張りのない声でメイデンはそう言った。その時見せた彼女の恍惚な表情に、優真は自分の心が昂るのがわかった。
◆ ◆ ◆
「……本当によろしいのですか?」
後ろに佇む銀髪の男にそう言われ、銀髪の女神は画面に向けていた目を後ろに向けた。
「もちろんだ。我もあれを手放すのは少々名残惜しいが、それでもやらねばならん。時空神様のもとに挨拶しに行った我と共におったカリュアドスならわかっていたことであろう?」
そう聞かれ、銀髪の男は目を瞑る。
「ええ……時空神様の思惑も理解出来なくはないです。それほどまでに、ユウマ殿のお力が欲しいのですね……」
「そうだろうな。だが、我だって神だ! 下級の神とはいえ神だ!! 全てが時空神様の思惑ではない……」
「……と言いますと?」
そう聞いたカリュアドスの表情は少し楽しそうなものだった。
「我だって大事な娘には幸せになってもらいたいのだ!!」
その時見せた女神の表情はとても楽しそうなものだった。




