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目の前で顔色が変わった少女の姿を見て、カリュアドスは昂る感情が抑えられなかった。
つい数分前まで、彼女を見ても何の驚異も抱かなかった。
強者を見て怯えながら、自分の体に鞭打って立ち向かおうとする憐れな少女。
それが今はどうだ!
白く猛々しいオーラが彼女から溢れだしたではないか!
人間の姿だというのに、猛虎だった時よりも強いと本能的に察してしまう。
何が彼女を変えたのか……そんなのは誰が見たって明らかだった。
アマミヤユウマの奇行だ。
(はは……なるほど……彼の魅力が少しはわかりましたよ! メイデン殿!)
鎖の擦れる音を鳴らし、カリュアドスは先程とはまったく違う感情を抱きながら、神器メイテオールを振るった。
けたたましい音を轟かせながらフィールドの地面に激突する鉄球。しかし、覚醒したファルナは、それを容易に避けてみせた。
(ふむ……どうやら見た目だけでは無いようですね!)
ファルナが次々に鉄球を避けていく為、カリュアドスは再び指を鳴らす。
特殊能力により、会話中に仕込んでいた仕掛けが発動し、ファルナを襲う。だが、それらはファルナの残像を掠めることしか出来なかった。
彼自身、元からわかっていたことだが、やはり、相性が悪かった。
カリュアドスの特殊能力は【鉄人】。
その力は、自分の支配下にある鉄を自在に操るもので、先程の攻撃は、その能力を利用したものである。
フィールドは、大地の女神様が用意したもので、そこには砂鉄が含まれている。カリュアドスはその砂鉄を飛ばして、相手に攻撃を仕掛けている。そのうえ、【鉄人】の効果で、その威力は銃弾レベルの高火力になる。
ばれては面白くない為、今までカリュアドスは少量で効果的な攻撃をしていた。だが、今の速すぎるファルナにそれが間に合わない。
予想以上の速さについ顔がにやけてしまう。だが、自分のやるべきことを為さなくては、自分がここに立った意味がない。
だから、砂鉄の仕掛けが相手にばれるのを覚悟し、カリュアドスは大技を発動させることにした。




