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立ち上がっていたファルナは膝を折り、体勢が崩れてしまう。訳のわからない攻撃を受け、自分の右の前足から血が出てくる。
だが、この程度の傷であれば、神獣化したファルナならすぐに治る。そして、動くことにも支障はない。
ファルナは再び攻撃を始めようとするが、カリュアドスの指を鳴らそうとするモーションを見て、急いで跳躍する。
「ふむ、その程度の判断力は残しておりましたか……しかし、甘い」
そう言ったカリュアドスが指を鳴らした直後に、背中を数発撃ち抜かれたような感覚がファルナを襲う。硬い毛を傷つけず、自分の体のみを的確に撃ち抜いた攻撃に、ファルナは訳がわからなくなる。
急いで距離を取るも、ファルナはカリュアドスの攻撃から逃れられない。
再び指を鳴らす音と共に、ファルナの体から血が舞っていく。
どういう攻撃なのかわからない。相手は、最初の場所からまったく動いていないというのに、自分は血だらけになっている。
怖い。
またあの狭く人の泣く声しか聞こえない場所に閉じ込められ、大好きな人達と離ればなれになる。
もうあそこには行きたくない。でも、目の前の男を倒さないと、自分の意思関係なく連れていかれる。
体を震わせ、自分を見て怯えた表情になる猛虎の姿を見て、カリュアドスは申し訳ない気持ちになった。
彼女とまた相対することになったのはまったくの偶然。まさに神の悪戯といったところだろう。しかし、それでも勝負は勝負。怯えた表情を見せる彼女とこれ以上戦ったところで、何の利もない。だから、さっさと終わらせることにした。
彼は『無敗』という称号を掲げているが、最強という訳ではない。彼は自分が負ける試合を行わない。どんなに危機的な状況でも、冷静に彼我の実力を見定め、相手に勝つ。
だが、弱い訳ではない。
なにせ彼は、元ファミルアーテ4位の実力者なのだから。
カリュアドスが懐から30センチ程度の棒を取り出した。すると、その棒が光りだし、棒から鎖に繋れている鋭い棘のついた鉄球が出てきた。
「神器メイテオール」




