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『さぁ、先鋒戦で荒れたフィールドを元通りにし終えたところで次の中堅戦に参りましょう! 先鋒戦はドルチェ選手の特殊能力によって戦闘不能となったウィル選手が敗北したことにより、既に鉄の女神様チームは後がない状態!! 切り札となる眷族筆頭をここで切るのか? それとも大将戦に温存か!? 鉄の女神様の采配に注目です!! 対する子どもを司る女神様チームは先鋒戦で策が見事にはまり、鉄の女神様チームから貴重な白星をもぎ取りました!! そして、流れを引き寄せたまま中堅戦に眷族筆頭を投入するのか!! はたまた、元四神の後継達や大地の女神様の眷族筆頭のような驚くべき人材を投入するのか!! こちらも注目です!!』
天使の実況でスタジアム全体が熱気に包まれるのを画面越しに見ながら、優真は悩んでいた。
次に出てくる相手が相手だけに楽観視できないのだ。
そして、優真の予想通り、その人物が控え室に通ずる通路から出てきた。
銀色の髪をオールバックにした壮年の男性が、執事服に身を包んだ状態でフィールドに立った。
その佇まいからは強者の余裕が伺える。画面越しでも強いとわかる彼のオーラに、顔がひきつってしまう。
眷族筆頭を除いた眷族達の中で、他の神々は、間違いなく彼は最強だと褒め称える。
その成績は、34連勝と未だに無敗を貫いている。
並みの眷族筆頭では太刀打ちできず、パルシアスも一度は戦ってみたいと称賛していた程の実力者。
「それじゃあ行ってくるね」
画面から目を離せないでいた優真に下から声がかかる。そこには、笑顔を見せているファルナの姿があった。
しかし、優真にはわかる。無理して震えを抑えつけ、気丈にも笑みを見せる彼女が、本当はあの男に恐怖を抱いていることを……。
だが、彼女を最終的に出すかどうか決めるのは優真じゃない。
自分が行くと言っても、主神である子どもを司る女神は止めるのだろう。だからこそ、優真には彼女に行くなとは言えない。代わりに行ってやるとも言ってあげられない。
それがわかっている優真は、片膝をついてファルナと視線を合わせた。
「無理だけはしないでくれ。ファルナが無事に帰ってきてさえくれれば、俺達は他に何も望まない……だからファルナ、今日は帰ったらいっぱい遊ぼうな」
その言葉に、ファルナは一瞬だけ呆けたような表情になった。だがすぐに「うん!」と答え、満面の笑みを見せて、優真に抱きついた。
「行ってきます!!」
そう言ったファルナは、手を振りながらフィールドに向かって駆けていった。




