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「子ども達を別室に移動させて正解だったな……」
手に握ったコントローラーでテレビの電源を消した黒髪の青年が部屋にいる者達にそう告げた。その言葉に賛同するように全員が頷き、青年の隣に座っていた黒髪の女性が口を開く。
「あんなグロ映像見せたら一生もんのトラウマだよね……ユリスティナちゃんをシェスカちゃん達につけた優真の判断は正解だったと思うよ」
「そう言ってもらえるのは嬉しいんだが……3人は大丈夫なのか?」
黒髪の青年がそう聞くと、3人はそれぞれ大丈夫であることを伝えてくる。そして、優真にはそれが、自分に心配かけまいとしている言葉ではなく、本心であることがはっきりと見てとれた。
ハナ以外の万里華とシルヴィは直前で顔を反らし、耳を塞いで優真からの見るなという指示を忠実にこなしていた。そして今更、この大会で死人が出たという言葉だけでは動揺すらしない。なにせ、一つ前の試合に出ていた炎の男神チームがここまで対戦してきた6人の内、たった一人を残して全員殺しているのだ。
それにすら歓喜の声をあげ、盛り上げようとするこの狂気じみた大会に、人間の常識なんて通用しないと全員が早々に理解したのだった。
「さて……わかっていたことだが、明日の初戦はメイデンさん達鉄の女神様チームが対戦相手だ。ハナさんが試合に参加してくれればすごく頼りになったんだけど……」
「最低限のルールとして、元々の3人以外から選手を入れ替える場合はその選手は1戦しか参加出来ないってことで、ハナちゃんは出られないんだよね……」
「ごめんね、ユウタン……」
話を変えた優真が次の試合に関しての話を始めると、万里華が補足説明を行う。戦力になれないことを謝るハナに、優真は優しく微笑みかける。
「大丈夫。昨日ハナさんが来てくれたお陰でばっちり体を休めることが出来たんだ。不安要素が無い訳じゃないけど、目標の為には優勝しか無いんだ。ハナさんの分も全力で頑張ってくるよ」
優真の言葉を聞き、ハナの表情が晴れ、その頬がほんのり紅色に染まる。その時だった。
「ハイハイ! イチャイチャするのはここまでね。それじゃあ……」
ハナの心情を読み取った万里華が、2度手を叩いて、現実に引き戻した。そして、優真が消したテレビを点け、今までの試合を観戦して得た膨大な資料を映し出した。
「これから対策会議を始めよっか」
そう言った万里華が、いつの間にかかけていた眼鏡を指でクイッとあげたことにより、彼女主体の対策会議が行われるのであった。




