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これが最後だと直感的にわかった。
そこに映し出された光景は、見覚えのある女性と、白い両開きの扉が開かれたもの。
エメラルドグリーンの長く艶のある髪に、グラマラスな体型の美女。間違いなく大人化した女神様だ。
しかし、隣で先程まで喋っていた筈の彼女は現れない。代わりに一人の女性が現れる。
それは、目の前で制止していた筈の女神様だった。
彼女は映し出された自分の姿から動き出すが、俺の傍に来ても、制止している女神様に変化はない。
「やぁ、ようやくこの試練を受ける気になったんだね。ちょっと残念ではあるが、約束は約束。彼女のこれからは君に委ねよう」
いきなり話し出した彼女の口振りは、まるで外の女神様とは意識が切り離されているかのようだった。
「この試練はいったいどういうものなんだ?」
その質問を、女神様は軽く笑い飛ばす。
「君はもうとっくにわかってる筈だ。明確でない時にすぐ答えを聞こうとする性格……頼られてる感じがして嫌いじゃないけど、たまには自分で答えてみなよ」
その言葉に、俺は小さく息を吐いた。俺の中にも一つの答えはあった。しかし、これが試練内容と言われると不安だった。
「この記憶は、万里華が俺に関わる際に感じた感情の思い出。しかも、良かった思い出ではなく、負の感情があった時の思い出だな?」
「うんうん……ちょっと惜しい」
女神様は腕組みしながら頷いてくるが、指で後ちょっとという仕草をしてきた。
「……惜しい?」
「そう。これはマリちゃん……いや、金橋万里華のターニングポイント! しかも、間違った選択をすれば、こっちの世界に来れなかったという重要な選択、その中でもかなり重要な思い出をピックアップしたんだ!!」
「……それ全然惜しくないだろ……」
「そんなこと無いさ。君にとって最初の方が印象強すぎて引っ張られただろうし、彼女の重要な選択には、負の感情が少なからずあった」
「……そうかよ……」
「一つ目の思い出。優真君達と会った思い出は言うまでもなく、大好きなお父さんと離れ離れになって悲しい感情を抱きながらの初対面だった……二つ目の優真君達との食事……三つ目の優真君の悲しみ……四つ目の優真君に助けられた思い出……そして、最後が優真君を失った思い出……そのどれもが周りを選ぶのではなく、優真君を選ぶという選択肢をした。……私はね、優真君。マリちゃんが嫌いだったんだよ」




