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47-2


「私なんだけど……今大丈夫?」

 閉まった扉の奥から聞こえた声は、万里華のものだった。

 普段であれば、万里華は俺が本気で疲れている時は気遣って休ませてくれる。そんな彼女がこんな夜遅くに訪ねてきた。驚きは大きかったが、何の理由もなくそんなことをする筈がないとわかっているからこそ、俺は素直にその扉を開けた。

 万里華の格好は、ネグリジェ姿だった。そして、どことなく儚げな様子で、いつもより魅力的に思ってしまった。

「ごめんね。こんな時間に……優真も疲れてるよね……」

「気にしなくていいよ。とりあえず中に入って……適当に寛いでよ」

「うん……」

 いつものように部屋へ招き入れる。大抵、布団にダイブしたりする彼女が珍しくベッドの上に座った。ソファーもあるが、それはベッドから少し離れている。

 いつもと異なる雰囲気を見せる彼女に違和感を抱きつつ、俺は用意してあるお茶をカップに注いだ。

 昨日悪夢を見たから安眠用に淹れておいたのだ。

 二つのカップを持ちながら、俺はベッドに向かう。お茶をベッドで飲むなんて普通はしたくないのだが、移動させられる雰囲気ではないし、おとなしく彼女にカップを一つ手渡した。

 万里華は俺にありがとうと言ってから受け取り、少し驚いた顔を見せた。

「……紅茶……嫌いじゃなかったっけ?」

「まぁな。でも、飲めない訳じゃない。嫌いを嫌いのままで終わらせるなんてもったいないしな」

「おぉ! 優真が成長しとる」

「失礼な……てかこんな話しに来たんじゃないんだろ? 万里華と無駄話をするのも楽しいが、特に用が無いってんなら明日聞くけど?」

「ごめんごめん。でもちょっと待って……気持ちを整理させたいの……」

 そう言うと、万里華は胸に手を当て深呼吸をし始めた。


 数秒の(のち)、万里華は閉じていた目をゆっくりと開き、決心した眼差しでこちらに顔を向けた。

「今日来たのはね……私が知ってることを全部言おうと思って……」

「……父さんの話か?」

 その言葉に悲しい眼差しを見せる万里華はゆっくりと頷く。

「……うん……あの時ね。優真が行った家で爆発音が鳴った瞬間、私と空き地でお喋りしていたおじさんは青い顔して優真を助けに行ったの……それで私もそっちに向かったら家が燃えてて……窓が割れた音して……それで数人の大人と一緒にそこまで行ったら……気を失った優真が割れた窓の破片と一緒に転がってたの……でも、炎の回りが異常だってことで消防士の人も家に入れてくれなくて……それで……それで……」

「もういいよ、万里華……」


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