46-21
ようやく泣きついてきたファルナとドルチェを落ち着かせた俺達は、万里華が案内してくれた6畳程の和室に来ていた。目立ったものは急須と湯飲みに脚の低いテーブル、お湯の入ったポット、そして俺達の下に敷かれた座布団くらいだ。
そして、俺は夢で見たことをこの場にいるシルヴィ、万里華、ユリスティナ、ハナさんの4人に話した。
俺が異世界からやって来たことは前に教えてある為、4人は俺の話をすんなり受け入れた。そして、涙を流してくれたり、衝撃を受けたような表情を見せたりと様々な反応はあったものの、皆真剣に聞いてくれた。
ただ、その中でも一番動揺していたのは、万里華だった。
それはそうだろう。
あの時、彼女は俺や父さんと一緒の場所に居たんだ。あの日の記憶を失った俺と違って、万里華はずっと知っていた筈だ。
「……なぁ万里華……俺はこの夢が嘘だと疑っている訳じゃない。不思議と本当なんだってわかる。……父さんは俺を助けにきたせいで死んだのか?」
その質問を彼女にするのは酷だと優真にもわかっていた。だが、彼女以外に聞ける相手はいない。
万里華は何かに怯えている様子で、悔しそうに涙を流しながら、項垂れるように頷いた。
「……おばさん……優真のお母さんにお願いされたの。優真は記憶が混濁してるから……お父さんは別の子を助けて命を落としたってことにしてって……責任感が強い優真が自分を追い込まないようにするためだからって……お願いされたの……」
「…………そっか……俺はずっと母さんや万里華に守られてきたって訳か……俺のせいで迷惑かけたな……」
優真は哀しそうな表情を見せる。それを見た万里華は、いてもたってもいられなくなって机を叩いた。
「優真のせいなんかじゃない! 優真は被害者なんだよ! あそこに別の誰がいたかって話は知らないけど……でも、優真は悪くない! 優真は悪くないんだよ!」
「うん! ユウタンの話が本当なら明らかにユウタンを襲った赤髪の男が悪いよ! ユウタンは全然悪くない!!」
真剣な顔で、自分を慰めようとしてくる二人を見て、優真は驚いた顔を見せる。そして、周りを見ればユリスティナとシルヴィもしきりに頷いて同意している様子だった。
「……そっか……俺は悪くない……か……」
優真が俯いてそう呟くと、彼の目から一滴の涙が床に落ちた。




