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46-20


 イルジョネアは一人の女性と共に平伏していた。

 少し不気味な雰囲気を漂わせ、ワカメのようなうねりを見せる紫色の長髪が特徴的な女性。彼女こそがイルジョネアの主神、幻想と夢を司る女神だった。

 そんな彼女達が平伏している方向には絢爛豪華とは真逆でありながら、存在感を放つ玉座があった。

 そこに座っている存在は、肘掛けに肘をつきながら二人を見下ろしていた。

 そんな存在から威圧的な視線を向けられていた二人の額には脂汗が浮かんでいた。

「申し訳ございません! 私が不甲斐ないばかりに創造神様から仰せられた任務を遂行できませんでした!」

 イルジョネアは緊張しているのか、いつもより声が強張っていた。


 今回、イルジョネアに与えられた使命は、子どもを司る女神チームに勝利することだった。

 その際、女神に危害を加えない範囲でならどんな手を使ってもよいと言われていたのだ。

 その任務を遂行する為に取った行動が家族の特殊能力を使用して優真達3人にトラウマを見せること。

 他のメンバーは素性が定かではなかったうえに、ハナという元大地の女神の眷族筆頭がいたから手を出さなかった。後ろにある繋がりが見えない以上、得策ではなかったし、麒麟には渋々ではあったが見なかったことにするという口約束もしてもらえた。だが、結果は失敗。

 ハナが試合に出るという行動にも驚かされたし、心を折るほどの防御力を見せた玄武族の少女の存在にも驚かされた。しかし、やはり一番の問題点は雨宮優真という謎多き存在がトラウマに耐えてみせたこと。

(彼さえ居なければ、ハナが出るという可能性にも目を向けられたというのに……そういえば、彼の夢に出てたあの赤髪の男って……)


「表をあげよ」

 優真の夢に出ていた人物を思い出していたイルジョネアの耳にその言葉が届く。

 その指示に、幻想と夢を司る女神共々従う。

「今回の件、最大限とはいかぬが、よくやった。ハナがそなたとの試合に出てくれたのは好都合、これで不穏分子は消えた。約束通り、時期ファミルアーテの末席にイルジョネアは入れておいてやろう」

 その言葉に、二人は再び頭を下げた。

「……ありがたき幸せ」

 5位から10位という降格ではあったが、試合内容的には番外になってもおかしくなかった。

 そのこともあり、イルジョネアは心から感謝の言葉を告げ、神と共に部屋から退室した。


 残された創造神は控えていた男を見て、不敵な笑みを見せた。

「もうすぐだ。もうすぐでそなたとの約束を果たせるぞ」

 そこに立っていた影は、碧色の瞳をまぶたで隠し、創造神に深々と頭を下げて退室した。


 ◆ ◆ ◆


 テンションの高いハナをおんぶしながら歩く優真と、その光景を少し羨ましそうに見るシルヴィとユリスティナ、そして、結局寝たまんまのスーチェを背負いながら、シルヴィとユリスティナの二人に苦笑いしている万里華。

 イアロはシェスカの手を引きながら、楽しそうについていく。ただ、女神とミハエラはやるべきことがあると言って先に帰ってしまった。

 そんな感じで優真達一行は、自分達の後に行われていた試合を見ることなく本拠へと戻ってきた。

 そして、そんな彼らを迎える二人の影。

 誰であろう、ファルナとドルチェである。

 二人の目には涙がたまっており、優真を見た瞬間、泣きながら抱きついてきた。

「お兄さん、僕を捨てないで~!」

「おじさんのプリン食べたの謝るし、おじさんの分のケーキのイチゴ食べたのも謝るから~!!」

「うぇっ!!? ちょっ、どうした二人共!!?」

 優真に泣きついて離れようとしないファルナとドルチェ。結局二人はハナが元に戻るまで優真の服に涙と鼻水をつけ続けていた。


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