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ハナがその言葉を告げると、ハナの神器とハナの体から桃色の強烈なオーラが溢れ出す。
覇気にあてられ、自分の体が震えているのをイルジョネアは実感する。だが、それでも彼女は楽しそうな顔を崩さなかった。
いくら同じファミルアーテであろうと、自分と彼女の間には下級神の眷族と上級神の眷族という高い高い壁が存在する。そんな自分に、歴代最強とまで言われた彼女が本気で相手してくれている。勝ちを望む家族には悪いと思ったが、それでも心が踊ってしまう。
まだ終わりたくない。ずっと、戦っていたい。
「綺麗なオーラね……」
未来予知の魔法を使ってはっきりとわかった。これは自分じゃ避けられない。
イルジョネアがハナのオーラを称賛した瞬間、フィールド全体が緑一色で埋め尽くされた。
1本1本が細い蔓でありながら、それらはハナの意思で生きているかのようにまとまって動くため、かなりの迫力があった。
テレポートで唯一蔓の無い空中に逃げたイルジョネアだったが、目を周りに向けた瞬間、その光景に目を見開く。
フィールドを囲む半球状の結界、そこにもびっしりと緑色の蔓が生えていた。
「……ふふ……これが神器を使ったハナの実力って訳ね……」
そう呟いた直後、ハナの声でこう聞こえた。
「ちょっと痛いけど……それくらい我慢してね……」
その言葉が耳に届いた直後に、蔓が一斉に成長し、自分目掛けて襲いかかってきた。
風の魔法で切ったり、炎の魔法で燃やしたり、氷の魔法で凍らせたりしたが、それは時間稼ぎにもならなかった。
数分後、緑色の蔓が一斉に消え去り、上空からイルジョネアが地面に向かって垂直落下するのをハナが出現させた蔓で受け止め、勝敗は決した。
ハナの神器『アナプティクシ』はミクロサイズの種子を振り撒く能力を持つ。本来であれば恵みの大地にするための神器だが、ハナの【成長】と合わさった時、それは凶悪な武器となる。
空中に振り撒かれた種子はハナの意思で成長し、様々な植物となって攻撃することが可能な武器となる。
今回ハナは、相手の攻撃を回避しながら全体に種子を振り撒き、最後に必殺の一撃を放つ算段で試合を展開していったのだった。
そして、ハナがイルジョネアとの試合に勝利したことによって、2-0で優真達子どもを司る女神チームがベスト八に一番乗りしたのであった。




