46-16
「なっ!? 嘘でしょ……」
目の前に出現した蔓を見たイルジョネアは、その信じられない状況に見入ってしまう。そのせいで、バリアが壊れた後の対応が遅れてしまった。
急いで回避するが、左足に攻撃を受けて痛みが走る。
(……危なかった……それにしても、あんなことあり得るの? ……蔓が何もない空中から出現した?)
地面から出現するなら蔓の発生にも納得がいく。しかし、何もなかった筈の空中から出現するのはいくら眷族でもあり得ないと言わざるをえない。
だが、相手はそれをやってみせた。これからはフィールドの下だけでなく、全体を注視しなくてはならない。
奥の手は取っておきたかったが、全体を注視した状態で彼女の攻撃を避けるなんて不可能に近いのだから、やるしかない。
「……やっぱり女帝に奥の手隠して勝とうなんて考えが甘かったわね……」
イルジョネアが立ち上がりながらそう呟くと、彼女の周りから唐突に蔓が出現し、彼女目掛けて襲いかかった。
軽く20本は越えるであろう直径10センチ程のしなるように襲いかかる蔓。しかし、イルジョネアはそれらを軽々とかわしてみせた。
「僕に見通せない未来は無いよ……なんちゃって」
◆ ◆ ◆
「なんだあれ? あの攻撃を避けた? しかも来る前から何処に来るかわかってたような動きだったな……」
「わかってたようなじゃない。わかってたんだよ」
優真の独り言に女神がそう答えた。その言葉に優真は女神へと視線を向ける。その時見せた子どもを司る女神の表情は悔しそうでありながら、どこか楽しそうなものだった。
「使えるかもしれないとは思っていましたが……まさか本当に使えるのですね。となれば他のお二方の魔法も使えると考えた方が……」
女神のすぐ傍に立っていたミハエラが女神に話しかける。その言葉に女神は軽く頷いた。
「そうだね。もし使えるんならいくらハナちゃんでも苦戦を強いられるだろうね」
「おいおい……そっちで勝手に納得されてもこっちには全くわからないんだけど……あれはいったいどういう効果なんだ? 別の特殊能力なのか?」
優真の疑問に女神とミハエラが頷きあい、ミハエラが口を開こうとした時だった。
「もしかして未来予知ですか? 漫画とかで見る相手の数秒先を見るあの……」
万里華はそこまで答えると口を押さえて、視線をゆっくりと優真達からそらし始めた。なぜなら、目を向けた先にいる大先輩のミハエラが滅茶苦茶怖い顔をしていたからだ。
また私の数少ないセリフをとったな……と目で脅され、万里華の表情は真っ青になる。
そんな万里華を見て首を傾げた優真は笑みを浮かべるミハエラの方に顔を向けた。




