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46-10


 その光景にイルロットは信じられないと言いたげな表情をみせた。

 それも仕方ないのかもしれない。彼女にとって数少ない攻撃手段であり、その中でも最強の技だった。

 それなのに通用しない。

 だが、それで諦められる筈が無かった。

 自分が尊敬する主神に任された先鋒という役割を絶対にこなさなくてはならない。イルロットは本気で様々な技を繰り出していく。

 最強の技は防がれても、どれかは相性が良くて通じるかもしれないと、めげずに放ち始めた。

 しかし、その全てが呆気なく弾かれてしまう。

 おまけに中のスーチェは眠そうに欠伸までし始め、しまいにはその足を曲げ、地面に座りこみ、そのまま寝始めた。

 イルロットの攻撃が通用したのだと会場中が盛り上がるが、攻撃しているイルロットと、控え室で見ている優真にはわかる。

 彼女が自分から寝始めたのだということを。

「なめやがって……」

 歯を軋ませ、イルロットは怒りのままに攻撃を繰り出していく。しかし、寝ているにも関わらず、スーチェの防御壁は壊れる様子を見せない。

「なんで……なんであたいの攻撃が通用しない!! ふざけんな! 寝ている奴なら絶対にかかるんじゃなかったのかよ!」

 しかし、怒りを露にしても、スーチェには通用しない。


 やがて、崩れ落ちるようにイルロットが息を切らしながらしゃがみこむ。

 そして、未だに巨大な亀の姿で寝ている少女に目を向ける。攻撃されているというのに、健やかな寝息を立てている。

 だが、尾の蛇だけは今もイルロットに目を向けている。

 先程まで何の関心も抱かなかった蛇に視線が誘導されていく。

 睨まれ、その目から逃れられないのだと錯覚してしまう。

(……まさかあたいは……最初からこの子の罠にかかっていた? 技を連発してあたいが弱るのを待っていたとでも? ……わからない。未だに目を覚まさない少女にこれほど恐怖を感じたのは初めてだ……いったいどうすれば……)

 時間が経つごとに自分は彼女に捕食されるのではないかという考えが募っていく。

 これまでの試合で対戦相手を食らう者もいた。彼女もそういう類いの存在で、それを考慮し、今まで出そうとしなかったと考えれば、ここまで彼女を出さなかったのにも合点がいく。

 もし、昨夜の襲撃に気付いて、相手の女神様が怒っていたとしたら、そういう指示を出していてもおかしくはない。そんな考えが募っていく。


 やがて、蛇からのプレッシャーに耐えられなくなったイルロットは自ら敗北を宣言した。


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