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『さぁさぁさぁ本日も始まってまいりました! 神々の余興4日目! 残るチームもたったの16チームとなり、こっからの試合は次期ファミルアーテを決定する重要な試合となっております! その為、この日行われる8試合からは全てこのスタジアムで行わせていただきます!!』
盛り上がる会場の空気、今までのスタジアムに比べて特別広く豪勢な造りになっているこのスタジアムは、今までと違い、巨大なスクリーンがある。
今喋っている天使の整った容姿がアップで映し出され、色々と説明を始めるなか、俺は相手の対策と先鋒戦のことを考えていた。
初戦を誰が出るかという話し合いに俺は参加できていない。時間稼ぎの為に出ろと言われれば、1時間だろうが1日だろうが稼ぐつもりでいた。いつ呼ばれてもいいよう自分の心身を落ち着かせる。
そして、先鋒戦の者が呼ばれていく。
相手は露出度の高いドレスを着た首の辺りまで髪を伸ばした女性だった。昨日のシルエットとは全体的に異なる印象を受ける女性。局部的なところから身長といった体格的な違いもあったが、一番違うように思えたのは雰囲気だ。
昨日のシルエットは、先鋒戦に出る女性よりもおしとやかさがあった。そのうえ、彼女よりも圧倒的に強いと思わせる。
本人を見ないとわからないだろうが、おそらく昨日のシルエットは幻想と夢を司る女神様の眷族筆頭、イルジョネア・バウマンという女性で間違いないだろう。
「……おじしゃん、行ってきます……」
控え室に設けられた画面に目を向けていると、眠そうな声が聞こえてきた。それに気付いてそちらを見れば、そこには眠そうに目を擦っている黒に近い緑色の髪の少女が立っていた。
「……もしかして……初戦はスーが出るのか?」
俺の質問にスーは小さく頷いた。
驚きがないと言えば嘘になるが、それでも彼女が出るだろうということはなんとなくわかっていた。
なにせこの子の力は、ファルナやドルチェに引けを取らないどころか、下手したら二人を凌駕するかもしれないのだ。
「スーチェ。心の色が読める君には嘘が通用しないと思うから本当のことを言うけどさ。実は結構不安なんだ」
「……知ってる」
「だよね。相手はファルナとドルチェを精神的に痛め付ける連中だ。スーチェが二人みたいに悪夢を見せられたらと思うと不安で不安で仕方ない。だから、もしもの時はすぐに敗北を認めて、無事に帰ってきてくれ」
「……うん。無事にかえってくる……だから信じて」
そう言うとスーはその眠そうな目を開けた。
「私……勝つから……」
その言葉がとても頼もしく感じ、俺は最後にスーの頭を撫でて見送った。




