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46-3


 小学校高学年だった俺はこの日、父さんとキャッチボールに出掛けていた。

 近くに住んでいた万里華も一緒に来ており、3人で楽しい時間を過ごしていた。


「ばかたれ。二人しかおらんのにホームラン打つバカがどこおっとか」

 キャッチボールをやめ、3人で簡易的な野球をし始めると、空き地の横にある家に俺が打ったボールが飛んでいってしまった。

「ほら優真、ちゃんと謝ってこい。くれぐれも黙って取ってくるんじゃないぞ」

「はぁい……」

 父さんにそう言われて、俺は仕方なく隣の家へと向かった。


「すいませ~ん。さっきボールを打ち込んだ優真って言うんですけど~誰かいませんか~?」

 玄関の前でそう叫ぶが、誰も反応を示さない。

 誰もいないのならラッキーだと軽い気持ちで戸の確認をすると、残念なことに開いていた。

 引き戸を開け、再び大きい声で誰かいないか確認する。しかし、誰も反応を示さない。仕方なく帰ろうとしたその時、奥の方で物音がした。

「誰かいるんですか~? 入りますよ~?」

 不気味な和風様式の玄関でそう聞くが、返答は無い。だが、謝れと言われていたにも関わらず、何もせずに帰れば父さんに怒られてしまう。こうして俺は軋む廊下を歩き始めた。

 ボールは案外すぐに見つかった。

 適当に入った部屋の窓から、転がっているボールが見えて、俺はすぐにボールを拾いに窓へと近付いた。

 すると、背後で声が聞こえた。

「こんなところで何してる?」


 後ろから声をかけられ、俺は急いでそちらに振り向く。そこには一人の男が立っていた。その赤く燃えるような逆立つ髪と俺を睨み付けてくる威圧的な目に俺は恐怖を感じて何も喋れなくなった。

「我輩はお前に何をしているのか聞いているのだが、なぜだんまりを決め込む」

 その威圧的な声に何か喋らなくてはと、声が震えてしまう。

「……ご……ごめんなさい……ボールが中に入っちゃって……謝れって言われたけど……誰も来なくて……」

「要領を得んガキだ……いっそ殺すか……」

「……ころす……?」

「ああ、姿を見られたからな。もはや一人も二人も変わらんだろう」

 そう言ってくる男の顔が怖くて、俺はここから逃げ出したい気分になった。そんなタイミングで奥から爆発音が轟いた。


「ちっ……ガキに気をとられて、爆発させたのをすっかり忘れてたな……まぁいい……さっさとガキも……ちっ、逃げられたか……」

 男は先程まで子どものいたところに誰もいないのを見て舌打ちした。見れば、廊下とは違う方向にある襖が開け放たれていた。

「時間をかけては家を燃やした意味もない……さっさと終わらせねばな……」

 その言葉を残して、男は子どもの逃げた方に歩を進め始めた。


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