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46-2


(またこの夢か……)

 炎で燃え盛る建物の中で優真はそう思った。前回と違って今回は体を自由に動かせる。

 これが例の事故であったなら、優真自身がこの造りを知っている筈がない。だが、不思議とそれらは例の火事現場だと優真は確信していた。

(……なんかやけに頭がくらくらするな……)

 優真は頭を押さえながらそんなことを思う。

 思い出しちゃいけない過去なのか……そんな疑問が頭を過るが絶対に違うと自分に言い聞かせる。

 この過去はとっくに克服した。

 受け入れるのに時間はかかったが、それでも大好きな父を失った悲しみはもう無い。今は父が見守ってくれていると知っているから、自分にとってこの過去は何の意味も成さない。

 優真はそう思っていた。

 しかし、優真は気付く。自分の頭を押さえている手が違和感を感じたことに。

 恐る恐るその小さな手を見てみれば、手は真っ赤に染まり、自分の視界も赤くなっていく。

 そして、部屋の隅にあった姿見が視界に入り、自分の姿をそこで見た。

 そこには、頭部から流れた血が目の辺りまで流れている幼き雨宮優真の姿が映っていた。

 その瞬間、自分の精神が激しい動揺を見せる。

 心臓が高鳴り、胸が締め付けられるように痛い。呼吸が激しくなっていき、冷や汗が流れていくような感覚を感じる。涙が勝手に流れ始め、そこから逃げなくてはならないのに踞ってしまう。


 これ以上、思い出しちゃ駄目だ。

 自分の何かがそう警告してくる。

 訳がわからない。これはただの夢で、自分はこの場にいなかった筈だ。現実で起こったことじゃない。

 ……本当にそうなのか?

 俺は本当に外にいたのか?

 確かにいた筈だ。病院のベッドで母さんにそう聞かされて…………なんで俺は病院に居たんだ?

 痛い! 頭が痛い!? 思い出しちゃいけないと警告してくる。いったい何を思い出しちゃいけないんだ! わからない! わかりたくない!!

 そんな時、ふと女性の声が俺の耳に届いた。


「ふぅん……これがあなたのトラウマなのね……」

 聞いたことの無い声が聞こえた直後に俺は見せられる。自分が自分に隠した過去を。


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