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46-1


 今回の件で反省すべき点が見つかった。だがそれは、今すべき後悔じゃない。

 次回に活かすべき後悔であり、答えを見つけるのが困難な問題だ。

 だからまずは、守れた幸せを大事にするべきだ。

「……そう思っていたのに……」

 目の前に広がる光景を見て、優真はきつそうな顔を見せた。


「さぁユウマ様! 遠慮なさらずに召し上がってください! おかわりもたくさんありますよ!」

 嬉しそうに目の前にあるビーフストロガノフのようなものを差し出してくるユリスティナ。俺は彼女に苦笑いを向けた後、嗅覚に優れているファルナの方へと視線を向けた。

 彼女は涙目で鼻を両手で押さえており、俺と目があった瞬間、勢いよく左右に首を振っている。

 それだけでもわかる。これやべぇやつだ、と。


 事の発端は万里華とユリスティナが今晩は食事を担当すると、俺とシルヴィに伝えたことから始まった。

 ユリスティナも手伝いは何度かしているらしいし、大丈夫だろうと最初は思っていた。

 しかし、出てきたのはこの見た目だけは完璧なビーフストロガノフだった。ファルナ以外の全員が危機感も抱かずに食べようとする。

 だが、最初に食べたイアロが悲鳴を上げながら倒れたことで、全員がその手を止めた。

 万里華に話を聞こうと辺りを探すが見当たらない。そこでユリスティナに聞いてみると、ユリスティナがかき混ぜていたビーフストロガノフを味見した瞬間倒れたらしく、疲れているのかと思い、ドルチェとスーの力を借りて部屋に運んだらしい。


 食べればイアロの二の舞。しかも、治療特化の二人はいない。文句を言えばユリスティナが悲しみに暮れるかもしれない。そんな詰みかけた状況の中で、俺はただ呆然とすることしか出来ないでいた。

 そんな中で、女神様がようやく口を開いた。

「優真君が目指す保育士像ってどんな形?」

 いきなりの質問に彼女の意図が読めない。だが、とりあえず答えることにした。

「保育士ってのは、子どもが家族の次に多く接する大人だってお祖母ちゃんがよく言ってた。だから俺は、子どもの模範となるべき存在になりたいと……」

「なら、子ども達の前で食べ物を食べずに残すなんて真似……絶対にしないよね?」

「!?」

 こいつ俺をはめやがったな!!

 よく見ればなんかニヤニヤしてるし……くっそ~まさかこんな返しが来るとは……流石の俺でも予想つかねぇよ……。

 だが確かに、俺を見ている子ども達の前で食べないという選択肢は最初から無かったのかもしれん。…………ええい、南無三!!


 優真が勢いよくビーフストロガノフを口にかっこみ、喉に流し込む。そして、皿とスプーンをテーブルに戻し、青ざめた表情で「ごちそうさま」と言うと、そのまま勢いよく眠りについた。


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