45-7
スタジアムの観客席から外に出た優真、ファルナ、ドルチェの3人は控え室に向かう為、他の者達と別れた。そして、優真達が使う控え室に通じる通路の前に見覚えのある3人がいた。
「ルキュナ……とか言ったっけ? あんたらの控え室は向こうだろ?」
透き通るような水色の髪を撫でている青年に、優真は敵意を剥き出しにしながらそう聞いた。
それを見て、優真との再会を楽しみにしていたキクルはびくついて、マルテの背後に隠れた。
「おいおい、私の仲間を怖がらせないでくれ。いくら心の広い私でも怒ってしまうよ」
「愚行を止めた天使に剣を振るった男が心広いだと? 笑える冗談だな……」
目がまったく笑っていない優真を見て、ルキュナは顔に愉しそうな笑みを見せる。
「まぁいい。彼女を奪う奪わない以前に私達は君に負けられない理由がある。同士の仇は取らせてもらうぞ……」
「……あっそ……別に仇とか興味無いし……だが、俺の大切な人に手を出したんだ。あんたには最大級の屈辱を味わわせて敗北を宣言してもらおうか」
そう言い残し、優真達はルキュナの横を通り、控え室へと向かっていった。
◆ ◆ ◆
『さて、本日第4回戦が間もなく開始されるなか、スタジアムの観客席は超満員でございます! しかもなんと! 上級神以上の方々も20組がこの戦いに注目しているのか上空には専用の観客席が浮かんでおります!』
空に浮かぶ天使はそう言いながら、周りにある直径10メートルはありそうな球状のカプセルの存在を伝える。中には天候の神以上の上級神達とその眷族達が中に入っている。
先の試合を観にきたのだろうと優真は予想していたが、相手が雪の神だというのであれば、相手の応なのだろうと理解する。
しかし、観客席で見上げた際に、見覚えのある紋章がいくつかあった。大地の女神と麒麟のものであった。そして、霧の女神の紋章も見つけられた。
『先日から二人の神獣族の眷族を引き連れていると話題が尽きないこのチーム! 今大会初参加にして大注目の子どもを司る神様チーム!! そして! 対戦相手はこのチーム!! 霧の女神様から家族を奪った彼らを絶対に許さないと豪語する氷獄の貴公子ことルキュナ・アルグレンが率いる雪の男神様チームだぁあああ!!』
「……霧の女神?」
その名前は試合前に集中力を高めていた優真を反応させるには充分すぎる代物だった。




